尊い……身分、品位などがきわめて高い。高貴。敬うべきさま。
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辞書を引くと、大方このような意味合いである。
では少々視点を変えて調べてみよう。
尊い……オタク界隈において自分が好きなものに対し使われる。素晴らしい!最高!の意。対象のものに対して信仰心が深く‘存在が貴重で神聖に感じる’さま。
私のちょっと変わった趣味は、熟年御夫婦の仲睦まじい姿をこっそり観察すること。
(あまりあけっぴろげにしていない趣味だ。)
良いことも悪いことも酸いも甘いも、さまざまな色の時間を共に過ごし、互いの長短を最も間近で見つめあってきた夫婦の関係は、まさにオセロの駒のように一心同体。纏う空気感までもが、似た雰囲気を醸しだしている。
若く情熱的で真っ直ぐなカップル(よくある学園ラブストーリー)を眺めるのも良いけど、背景に過ぎ去った時の流れを感じさせ、尚穏やかに人生を刻み続ける夫婦も素敵なのでは?
特に目元にできる小さな無数の笑い皺を見つけると、密かにテンションが上がる。
‘尊い’と言わずに何と言う?
また、この単語はとても言いやすい言葉だと思っている。呼吸するように‘とうとい…’って呟けるから。
この趣味に目覚めたきっかけは、カズオ・イシグロの「日の名残り」。老執事のスティーブンスの一人称で語られている小説。ぜひ読んでみてほしい。物語の人物達には幾つもの愛がある。詳しい事は省略するが、人生の選択により失った愛、芽生えた愛……さまざまな愛の形を見つけることができる。
好きな一文を挙げておく。
「私は夫を愛せる程に成長したのだと思います。」
たった一言だけだが、思い出す度に目頭が熱くなる。また前後のシーンも必読。一層深い思いが込められている事に気づくのだ。
明日まで開催中の個展。此処でもこっそり3組ほど観察させてもらった。
自分が彼の境地に至るまで、道のりは遠い……。
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