『雨の日テクテクテク』
- ユウキ サクタ

- 2 日前
- 読了時間: 2分
久々の東京散策はドンピシャで雨模様と重なった。かさばる荷物を抱えて、雨避けのために傘を差しながら見慣れない土地をテクテク歩くのは、それだけでなかなか体力を消耗する。アプリで手軽に地図を見る機会が増えて(ただの写真どころか360°見渡せるパノラマ画像に変換できたり)、さらには周辺地域のお店なども瞬時に知ることができ、その場に行かずとも臨場感ある情報が手に入る。“地図を見ること”のハードルが下がって、疑似体験のリアリズムが格段に上がっているようだ。
ただそうは言っても、画面上の視覚体験と、実際にその場に降り立って歩いてその瞬間の空気を感じるのとでは大きな違いがあるのも事実で……。
渋谷駅を降りて、代々木公園の方角に向かって歩いていた。お馴染みのGoogleマップを頼りに右手に傘、左手にスマホと、文字通りテクテクテクと。人混みをかき分けながら一歩一歩進んでいたが、ふと我に返った時、足元の地面が急勾配であることに気づいた。よくある上り坂の角度ではない、注意していなければこの雨水でテクテクツルッとスライダーのごとく滑り落ちてしまうくらいの坂道だ。前後左右の道に広範囲で続いていた。
この道のり情報はアプリで表示されていなかったな。
高低差を表す等高線が記された地形図というものを、ふと懐かしく思い出した。
高い所から低い所へ、重力の法則に従ってコンクリート舗装された僅かな隙間を雨水が伝っていく。その経路を防水塗装したブーツで上から踏み潰す感覚で歩いていると、無慈悲なガリバーにでもなったような気分だった。傘でカバーしきれない天からの水滴が顔やコートに雫となって残り、肌寒さと湿度の匂いを漂わせてきた。雨の日散策は、暖かい部屋で寝転びながらマップアプリを広げている時にはできない体感。(もう一度味わいたいとは露ほども思わないが。)
細かな記憶は薄れていっても、あの日あの時間、五感が受けた感覚は二次元の画面上では決して受け取れない貴重な体験なのだろう。
テクテクと歩いた先でたどり着いたカフェ、そこで注文したブランチプレートと珈琲の背後に雨模様の記憶がくっついている。




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