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『適正壁面』

  • 執筆者の写真: ユウキ サクタ
    ユウキ サクタ
  • 7月3日
  • 読了時間: 2分

かれこれスタジオハイデンバンでの制作期間が6年目に入りました。大学・大学院のアトリエよりも、長くお世話になっている。

修了時に運良く制作拠点をスムーズに移動できたおかげで、根無草のようにアトリエ放浪する苦労はせずに済んだ。(2~3月あたりは全国の美大卒業生が新たな制作場所を求めて、いろんなスタジオへ見学に赴いたりスペースの空き情報を収集したりする。毎年この時期が来ると「みんな無事に見つかったかな?」と勝手に思いを馳せている。)

6年間利用していて、ようやく気づいたこともある。私のスペースは元々居住向けの部屋で、他のスペースに比べたら天井が低く、作品を掛けられる壁面も少ない。とは言っても、少ないなりに大作を複数描ける場所をその都度整理整頓確保して、貰い物のイーゼルも使ってなんとかやりくりしてきた。

完成した作品を見返すと、スムーズに筆が乗って描けたもの、何度も何度もやり直しして半ばやけくそ半分で完成させたもの、なかなか最後の一手が決まらずずっと放置しててようやく仕上がったもの、いろんな過程を経ている。先日、過程ごとにざっくりと作品を選別してみたのだが、ある傾向があることに気づいた。

ドローイングから完成まで澱みなく描けたものは、扉から見て右側、キッチンスペースと隔てる壁面に引っ掛けて制作した作品が圧倒的に多かった。この壁面はこの部屋で唯一、全面が「壁」となっていて、展示する時のスタイルに一番近い状態で描ける。天井からの光と窓からの自然光のバランスも、部屋の中ではましな方。(良いわけではない、そもそも制作に最適な光源環境は作家ごとに違うだろうし……。)

ちなみにこの検証、自分の感覚だけでなく周囲からの感想も同じで、全面壁面にて制作した作品ほど多くの人から「お気に入り」との感想をありがたくいただいている。(そして販売にも繋がっている。)自分と他者は違うが、普遍的な美意識や感覚は人類で共通する何かがあるのだろうか?

他の壁面では窓付き、扉付き、押し入れ付き、さらに大きなテーブル付きで、キャンバスを少々不安定な状態に立てかけて制作している。集中している時は気づかないけど、無意識下で描きづらさのストレスが常にかかっているのかもしれない。

ほんの少しの違和感が、作品の良し悪しに影響しているのでは?という気づきをようやく悟ったとある日のお昼過ぎ。

その日の珈琲は強烈に苦く、ものすごく美味しく感じた。



 
 
 

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