『観光地アップデート』
- ユウキ サクタ

- 1 日前
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河津桜が満開の時期を迎えた。駅を出ると桜色の幟がちょこちょこと立ちのぼり、冬の名残りを纏った冷たい風を受け、たなびいていた。バスやタクシーが止まるロータリーの軸部分にも、もこもこに花びらを着飾った木々がある。停車中の車の隙間を潜り抜けてその木の元に駆け寄り、桜と戯れているのはおそらく観光客の人々だろう。
はてさて、去年は「ロータリーに立ち入るのはご遠慮ください」というアナウンスが流れていたような?今年はもはや諦めたのかそんな声は聞こえず、観光客の持つスマホやカメラのシャッター音が囃子のように響いていた。
メインの河津桜がいっぱい咲き誇っている水路は、駅からもう少し西に歩いたところにあり、普段は閑静な住宅街の通りが、大型キャリーを転がす人、リュックサックを背負ってる人、着物を着て頭の先からつま先まで念入りにセットをした人など、ザ・京都へ観光に来ました!という人々で賑わっていた。
その道のりに沿って、桜をモチーフにしたハンドメイド作品を売る出店、たこ焼きやフランクフルトを普段のお店の前で販売している居酒屋さんなどが点在していた。そして淀水路周辺にも桜餅や三色団子や摘みたて苺の屋台、さらに鯖寿司や豚まんを売る店が立っていた。(何故このセレクトなのか……?)次々と桜に乗じた新しい商売が展開されていて、一昨年よりも去年、去年よりも今年と、此処は着実に観光地としてのアップデートがなされていた。
満開桜のお出迎え。これほどの至近距離で触れ合える桜の木が物珍しいのか、老若男女国籍問わず、木々の根元は混雑していた。たまたま散策した時、桜そのものを撮影する人よりも、一緒に写り込んで桜と戯れる瞬間を記録している人の方が多い気がした。
私が淀に制作拠点を構えたばかりの頃は、此処まで観光地として確立した雰囲気はなかった。(コロナ禍真っ只中だったというのもあるだろうけど)
あの頃の、殺風景な空間で静かに鮮やかに満開になる桜並木を最初に見たものだから、今の黄色い声が響く雰囲気はどうも落ち着かない。新たに得た景色と引き換えに、終わってしまった景色があることを思い知らされて、鼻の奥がつんとなった。
「花粉がやばい。もう帰ろ。」
絵具が染み込む作業服のポケットに手を突っ込み、そそくさと観光地を後にした。




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