足元をシャカシャカと賑やかしていた落ち葉もいつの間にか地面に溶けていき、残された2022年の時間もわずかであることを知らせている。この時期はより一層、‘ジャネーの法則’がひしひしと感じられて自分の生きてきた時間の長さを実感する。
「チーズケーキをホールでガツガツ食べたい!」
先日誕生日だった連れ合いの野望を叶えるべく、近所のケーキ屋リンデンバームにて直径30cm程のチーズケーキを購入した。
表面がツヤツヤで水面のような質感。ケーキの縁を囲むタルトは少し欠けたり崩れたりしていて、素朴な手作り感が漂う。細部まで計算され飾り付けされた豪奢なケーキも魅力的だが、ちょっと歪なフォルムをしつつ、ずしりと重みを感じるこのチーズケーキも特別な一品だ。
「いただきます!!」
ペアリングとして苦味が特徴のマンデリンコーヒーを淹れて、お待ちかねのチーズケーキの水面にスプーンとフォークをダイブさせた。
少し抵抗感があったものの、すんなりと煌きの中に入り込んでゆく。大胆に深く掬うとクロワッサンのような白い生地が出てきた。砂糖の塊かと思ったがくどい甘さはなく、さっぱりと清々しく食が進んでいった。
チーズケーキの湖はあっけなく決壊し、お次はタルトの砂浜を粉砕。サクサクポロポロになったビスケット単体でも味わい深いが、やはりチーズケーキ部分と一緒に食べてこそ美味しさが共鳴する。
円形が削られ、齧られ、湖の面影が小さくなった。夢中で食べている最中、互いの顔は常に口角が上がり、目尻が下がって、いかにも気が抜けた能天気な表情になっていた。
『笑う門には福来たる』の諺がぴたりと当てはまる顔だ。
笑い顔は様々な効果がある。笑った表情は顔全体の筋肉を使うため、通常よりも多くカロリー消費される。お腹を抱えるほどの大笑いはさらに腹筋も鍛えられ、軽く運動した時と同じくらい消耗するらしい。
笑い顔を眺めていると人の顔は千差万別で、笑い方や仕草からその人の特徴が見えてくる。もちろん憤怒や悲哀の表情でも分かったりするが、陽の感情から読み取れる人となりのほうが安心感がある。
人の感情は複雑で、笑いながら怒ったり悲しんだりすることもある。でも笑う事ができる人は、それができるだけの確かな強さを持っていると感じる。
楽しいことばかりがあるわけじゃない。大変なこと、辛いことも待ち受けているであろう未来を、大笑いしながら受けて立とうか。
ホールのチーズケーキをぱくぱく食べながら、来年の目標の一つに‘よく笑う事’を掲げておこうと決めた。
Kommentare