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『胡椒餅』

  • 執筆者の写真: ユウキ サクタ
    ユウキ サクタ
  • 2月24日
  • 読了時間: 3分

三条の商店街を歩いていると懐かしい香りが鼻腔をくすぐった。ほかほかの香ばしい香辛料の効いた、パリパリに焦がした小麦の香り。観光客で賑わう河原町通りと三条通りの交差する地点にぱっと華やかなパフェサンプルが並ぶカフェからふねや、のお隣に、真新しい胡椒餅のお店が立ち上がっていた。

胡椒餅といえば、3年ほど前グループ展に合わせて台北へ行った時、ギャラリーのオーナーさんに強くお勧めされた夜市のメニューだった。

「こしょうもち、って日本語で充分伝わりますよ~。」という言葉を信じてひたすら夜市を練り歩いた思い出。夜市を代表する名物料理だが、その時歩いていた通りには一件しか胡椒餅を扱っているお店はなく、それも夜市の端の端、底抜けの屋台の音色が途切れる地点に控えめに構えていてもう少しで見落とすところだった。

そんなセピア色に変わりつつある記憶をふいに引っ張り出した香りにつられて、お店の看板を見ると、「台湾創業 窯焼き肉まん専門店『台湾老劉胡椒餅』」と掲げられていた。

ぎっしり詰め込んだお肉と野菜の餡は確かに餅というより肉まんに近い。ちなみに英語表記はMeat pepper cake。餅であり肉まんでありケーキ。言語翻訳が発展している社会でも、細かなニュアンスや概念をそっくりそのまま写しとることは難しいのかもしれない。

メニューは専門店らしくストイックに、豚肉胡椒餅、牛肉胡椒餅、蒸し胡椒餅の3種類とドリンク類のみだった。台北で食べ歩きしたものはどちらだったか考えたこともなかったが、今回は豚肉胡椒餅を買い食いした。(この直前にからふねやでたらふくパフェを食べたことは記憶から抹消する。)

簡易の包み紙へ既に肉汁が染み出していて、急いで食さなければ大惨事になる。大口で一口目をいただくと、ブロックサイズのお肉がごろごろと転がってきた。焼きたての固い皮をがぶがぶと回収しながら中心部分のお肉を落とさないよう注意深く食べ進める。これはもはや時間との勝負だ。食べ歩きなんて呑気に構えていられない。行き交う人の流れから避難して、しっかり食することに集中した。

食事の終了は呆気なくやってきた。リスのようにもぐもぐしていたほっぺの中もすっかり空になり、手元の胡椒餅も原型の面影無くタレの染み込んだ小さな皮のみ。この瞬間はいつもちょっぴりしんみりとする。

グローバル化の恩恵を受けて、此処にいながら世界のいろんなものに触れる機会がある。でも本場のあの空気感、あの場所で、臨場感を感じながらまたいただきたいとも思っている。

記憶の中の夜市に思いを馳せて、最後の一口を放り込んだ。



 
 
 

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