大型チェーン店から個人の地域密着型のお店まで、街中には至る所にパン屋さんがある。
定番のカレーパンやホットドッグ、チョココロネにアップルパイなど、お惣菜系から菓子パンまで幅広いレパートリーが店先に仲良く並ぶ光景は、いつ見てもわくわくする。焼きたてほかほかのパンが大きな特製窯から出てくると、小麦のこんがりした香りが鼻腔をくすぐりお腹の虫が活発になる。
様々なパン屋さんを探索してきたわけだが、9月に神戸を訪れた際に発見したパン屋さんが今一番深く印象に残っている。
阪神高速3号神戸線が走る神戸市東灘区の住宅街の一角に佇む、「パンのお店ito」。食パンと毛糸玉を組み合わせたお店のロゴは‘ito’という名前にぴったりはまる。
近くの格安ビジネスホテルで一泊し、朝食を取ろうと付近のお店を探していた。ここでグーグルマップが大活躍した。
AM8:00、開店と同時にお店の扉が開く。
「お待たせしました〜どうぞ。」ランドセルを背負った可愛らしいスタッフさんが案内をしてくれた。近くに小学校があるのだろう。「いってきまーす!」と「いってらっしゃーい。」を背景に、初めての店内パン景色と香りを満喫する。
「ブリオッシュ焼きたてです。」
「食パン焼き上がりました。」
「ただいま焼きたてクロワッサン並べますね〜。」
次から次へと運ばれてくるほかほかパンで、棚はあっという間に埋め尽くされた。どれにしようかな?嬉しくて困惑する悩みを朝から味わえるなんて……!
最終的にりんごのシナモンパン、シーフードのクロックムッシュ、鴨ねぎのフォカッチャを購入。お昼分まで確保した。
熱々のクロックムッシュを大きなひとくちで頬張る。トマトソースとチーズ、さらにオリーブの実がアクセントになって身体全体にスイッチが入る感覚がした。この時まで‘クロックムッシュ’という名前すら知らず、こわごわ食していたが……。
「美味しい!!」
一人で買い食いした際に感嘆の言葉が飛び出すのは我ながら珍しい(たぶん……)。まさに大正解の味!
クロックムッシュはパリのオペラ座近くにあるカフェから誕生したトースト。ハムとチーズを挟み、ベシャメルソースなどを塗って焼き上げるのが基本らしい。
京都からは距離があるが、六甲山での作品メンテナンスに合わせて複数回通いつめている。でも、この展示が終わったらしばらく来られないかな……。
何度目かのitoパンを味わいながら、少ししんみりとした気持ちになった。
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