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執筆者の写真ユウキ サクタ

『遭遇』

世の中にはそっくりさんが3人いる——。

と言う噂は真実かしら??

当たらずと言えども遠からず。

電車の中で友人らしき後ろ姿を見かけて、声をかけようと車内を移動した。すると、その人もすら〜っと車内を移動して隣の車両に行ってしまった。

??ハイデンバンには行かないのかな?

気になりつつ、私もしれっと隣の車両に入り込み彼女の後を追った。

「あ”。」

探していた人物は、どうやら知り合いと電車で待ち合わせていたよう。話が弾んでいるらしく、ささやかに盛り上がっていた。

……人違いでした。

よくよく見るとちっとも似ていない。明らかに背丈も違うし髪色も違う。声もアルト域の落ち着いた低音ボイスで、おそらく医学か化学関連のことを話している模様。

声かけなくてよかった〜……!!

もう少しで赤っ恥をかくところだった。このままだと不審者になりかねないため、そっと元の車両に戻ることにした。

なんであの人をひと目見た時、友人だと勘違いしたのだろう?

ちらりと観察した限りでも、似ても似つかない風貌だったのに、後ろ姿の第一印象は本人にしか思えなかった。多分追いかけてなかったら、ずっと彼女だと思い込んでいただろう。

こうした未知との(?)遭遇は初めてではなく、海外へ行った時に明らかに彫りが深い顔の人物を見て弟と勘違いしたり、銀髪の老紳士を見てアニメの一休さんに登場する和尚さんを連想したり、学部時代の友人と大学院の友人が重なって見えたり(性別違う)、ゼミの先生の奥さんと名古屋の知り合いの作家さんが似てたり(年齢違う)…など、挙げればきりがない。

第一印象は、必ずしも物理的造形で決まるのではないんだなあ。

ひょっとしたら、“そっくりさん3人”伝説は、こうした現象を名付けたものかもしれない。

ハイデンバンへ戻ると、見覚えのある車が停車していた。

「あ、お疲れ〜!どっか出かけてたん??」

彼女が居た。

……うん、今度は人違いじゃないな。




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