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執筆者の写真ユウキ サクタ

『メモリーズ』

《思春期》と言われる時期に夢中になったものは、後々のアイデンティティを構築する重要な要素となるのではないか??

先月の出来事だ。

「そういやさくちゃんの好きなバンドやっけなあ、再結成?かなんかでトレンド上がってたな。」

——なんですと?

天地がひっくり返るほどの衝撃!

「えっ?本当?!再結成するの?!確かに今年20周年だけど!どこどこ?どこ情報?!」

「あわわわ落ち着いてーな。ちょっと前にツイッターでトレンドなってたんよ。今頃喜んでるやろな〜って……というか知らんかったの?」

素朴な疑問を投げられる。

「……全く把握しておりませんでした。」

面目ない。

一応バンドリーダーさんのアカウントはフォローしているのに…。滅多に開かないからタイムラインはすぐに流され、ネットの海の藻屑になってしまう。

「ほら、ちゃんと音楽系の記事に載ってるやろ?」

そういってわざわざ検索して見せてくれた記事は、確かに私が中学から聴いていたバンドについて書かれていた。

今年3月29日にデビュー20周年を迎えたこと、今なお(私以上に)根強いファンがいること、再結成ではないが20周年特別企画を開催予定であることが書かれていた。

さらにこの記事、20年前のデビュー日であり7年前にメンバーが解散発表をした日付けと同じ「3月29日午前0時」にアップされていた。

にくい演出をしてくれるね〜。

彼らの音楽沼にはまったのは中学1年生の時。恋愛ソングが邦楽の全てだと思い込んでいた私に、彼らの曲と歌詞の世界観は衝撃的だった。

『我.見えぬ,見ゆるども ああ...』

『流れる影ふみとらわれてゆく』

『ほら無常に夜は明けてく』

……え?これってJ-POPだよね?

この時代劇みたいな歌詞はなんだ? 学校でも聞いたことない単語がてんこ盛り。泡沫人、人生行路、カーテンドレープ…。‘躊躇い’、‘瑕疵’こんな漢字もあるのね!‘ここ’は‘此処’って書くのか!

あとダークにダークを重ねたような曲調……。かと思えばアップテンポで激しいサウンド。一曲の中で高低差の激しいリズムを乗せるなんて!

初めて購入したCDアルバムの感想だった。

難しくてよく分からない、が第一印象。でも聴くたびに、歌詞を読み込むたびに新しい発見があり気付いたら夢中になっていた。

かれこれ13年経過していても、聴いている時の気持ちによっていろんな世界に触れられる。

書物を紐解いてる様なほんの少しの緊張感、でも旋律はノスタルジックで穏やかな気持ちにしてくれる。(寝る前に聴くと快眠できる←立証済み、個人差あり)

学生時代、公式サイトやファンブログにて、作詞家さんがかなりの読書家で神話や哲学にも造作が深いことを知った。

さもありなん。

それからいろんな本を読んでみた。

ギリシア神話、日本神話、北欧神話、グリム童話、アンデルセン、日本昔話、最近だとマジックリアリズムの小説。

自分の性癖ドストライクなラインアップ……。

いや、あの時沼にドボンしたことが今の性癖を作ったのかも。

10代は大人でも子どもでもない。ある意味不安定なこの時期、外の影響を最も鋭敏に受け取っていた。思春期に見て、聴いて、感じたものは特別な目線で覚えている。

6月9日ロックの日。7年前の今日、最後のライブがあった。チケットを手に入れられず、泣く泣く実家近くの喫茶店でパフェを頬張りながら思いを寄せていたっけ。

延期中の20周年特別企画、行きたいなあ。

……もう少しアンテナ張っておこう。

情報提供してくれた友人に感謝しつつ、自分の鈍感さを反省したのだった。




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