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執筆者の写真ユウキ サクタ

『とある日のアトリエにて』

じめじめ、じとじと、ジメジメ、ジトジト……。

小学校のアトリエにはクーラーが無い。もう一つのアトリエにも、無い。

去年の今頃は大学のキャンパスで当たり前のように冷気を浴びてたなあ。散々ボロいボロいと愚痴をこぼしていたけど、黙々と描くには快適な空間だった。

連日の長雨で湿度が異常に高い。換気と少しでも風を取り入れたくて、ブラインド越しに窓を開けた。

晴天と曇りと雨、雷雨に雹に、狐の嫁入り……。1日の中で空模様がこうも激しく変わるなんて想像もしていなかった。

幼い頃の夏の思い出を振り返ってみる。

小学校の夏休みプール開き、中学校部活動の夏大会、高校美術科クラスの写生旅行。背景を彩る色彩は果てのない鮮やかなスカイブルー。

ブラインドの隙間を抜けてセミが入り込んできた。1週間だけの地上世界。どんなふうに見えているだろう?

体育館からは午後の授業を受けている生徒達の声や走り回る音が聞こえる。キュッ、キュッとシューズが擦れるリズムは統一性の無いメロディで、だけどもそれが心地良かったりする。

ただいま、分厚いブルーグレイの空は雷と雹を蓄えていそうだ。

子ども達の笑い声は古今東西変わらない。この状況でも、彼らは楽しむものを見つける術を持っている。

可哀そう、なんてものは大人の押し付けがましい感情だ。

学校が休校になっても、友達と会えなくても、遠くへ遊びに出掛けられなくても、身近な日常を全力で生きている気がする。

それでも、思い出として残る色彩の記憶がどんよりとしたものでありませんように、と願わずにはいられない。たとえそれが‘大人’のエゴだとしても。

自分が大人側に立っていることを否応なしに認識する。

セミは体育館の方へ飛んでいった。





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