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執筆者の写真ユウキ サクタ

『食の過ごしかた』

久しぶりに手の込んだ料理を作った。

ちゃぶ台にはてんこ盛りの中華風唐揚げ、ひき肉のピリ辛スープ、主食のご飯と付け合わせサラダがぎゅうぎゅう詰めに並び、賑やかな食卓となった。

レシピ動画を確認し、じっくり漬け込んだ鶏肉に衣を纏わせ熱々の油で揚げ焼きに。ジュージューと香ばしい音がお皿の上でも鳴り響いた。ザクッと衣と一緒にお肉の繊維を噛み砕くと、肉汁が飛び出し我ながら大成功の出来映えだった。ひき肉の入ったスープは、メインディッシュに負けないボリュームがあり辛味が絶妙なアクセント、唐揚げとの相性が抜群。こちらは作ってもらった。

「美味しい~!健康って素晴らしい!」

朝から何度叫んだことやら。身に染みて感じた事は繰り返し言いたくなるものです。

先月末にとうとう新型コロナ感染症に罹患してしまい、しばらく部屋で閉じこもりっきりの孤独な食生活を送っていた。幸いそれほど症状も悪化せず2~3日程度で回復し、SNSで知り合いと連絡を取ったり同居人の生活音や気配も感じられて、ずっとひとりぼっちというわけではなかった。でも朝昼晩の食事を小さな手製のちゃぶ台に一皿ちょこんと乗せて(感染対策として紙皿を使用)、六畳和室の壁に向かって一人でとっている時、なんとも形容しづらい複雑な心境を抱いていた。1日の目的が『部屋から出ない』ことが最優先だったため、起床した時点でほぼ目的を達成している。朝食をとっている時もわくわくした高揚感は無く、「無事に隔離期間終わって……。」が本音だった。昼食・夕食時も同じ気持ちのままだった。

アトリエで制作の合間に、ぱっと食事を済ませる孤食スタイルに慣れていたはずなのに。

一瞬疑問に思ったが、いやそもそも状況が違いすぎだと考えた。アトリエでの孤食は、その後に’作品を完成する’・’アイデアを突き詰めていく’といった明確な自分の意志で決めた予定や目的があって、能動的なものだった。対してこの隔離期間中の食事は、外部からの情報や決め事から派生したもので受動的要素が大きい。また、周りへのリスクを最小限にしなければいけないという緊張感もあったと思う。


隔離期間が明けた早朝、部屋のカーテンを開け放して日光を浴びながら真っ先に思ったのは「やっとごはん美味しく食べられるー!」だった。(隔離期間中もお茶漬けや野菜カレーを作ってもらって、もちろん美味しかったのだが。)

大きなちゃぶ台にたくさんの料理を並べて、今日は何をしよう?どんなふうに予定を組もう?と考えつつ料理を味わうひとときが、自分の中で重要なルーティンだと思い至った。これからやってくる時間を有意義に過ごすための瞑想に近い感覚。

または誰かと一緒に料理を囲んで、他愛ないおしゃべりを交わすのも心のスイッチをオンにしてくれる。慌ただしい毎日に食事時間を合わせるのは難しいけど、一人の時とはまた違った心身への良好なアプローチがある。



療養期間で得た教訓、美味しい食事は健康ありき。




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