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「本の記憶」

  • 執筆者の写真: ユウキ サクタ
    ユウキ サクタ
  • 6月2日
  • 読了時間: 2分

自宅の本棚を整理した。特に本を処分したわけではなく、右から左へパズルのように移動させただけなのだが……。時折こうして本を並べ直す作業に浸りながら、何を読んだか読んでいないか確認している。古本屋で購入したもの、立ち読みした勢いで衝動買いしたもの、どうしても書店で見つからず通販で注文したもの……、本の内容と共にそれを手に取った時の記憶も一緒についてくる。

デジタルで本も購入される時代。iPadやiPhoneの画面で操作すれば、手軽に何冊もの本の情報を携帯できる。荷物がかさばることも無いし、いつでも思い立ったらすぐにページを広げられる。栞設定をしておけば、どこまで読んだか見失うことも無い。だが同時に、デジタル媒体の本からは手に取った記憶というものが纏われていない。デジタル光の向こう側から提供される表紙や裏表紙にも、扉絵にも、はらりとめくれるページにも有機的な重みはなくて、情報は豊富でも虚を掴んでるような、ぼんやりと寂しさに似た感覚を抱く。紙媒体特有の紙質やインクの匂い、紙の擦れる音、カバーの質感、冊子としての存在感……内容と関係のない五感に働きかけてくる要素が恋しくなる。そうして結局、紙の本を購入するに至る。

学生時代から使用している六段収納の背高のっぽな本棚。一列では収まりきらずに一つの段に前後で二列に並べて、ジャンルもばらばらに押し込めている。読了済みと未読のものもごちゃ混ぜになってて、気づけば同じ本ばかり読んでいた。

本を整理するときはいつも思いつき。全てを床に下ろすとそこそこ広いリビングですら足の踏み場が無くなってしまう。たぶんこれからも、本は紙媒体で手に入れるだろう。

追加で本棚を用意しようか……。

棚の奥から未読の本が4冊出てきた。現時点で4冊ともお店で出会ったときの記憶のみである。今読んでる本を読了したら開いてみよう。




 
 
 

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