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  • 執筆者の写真ユウキ サクタ

『食の形式』

和食の基本的な形式として「一汁三菜」という言葉をよく聞く。文字通り、主食のお米に汁物一品、主菜一品、副菜二品で構成される。

私の中で一番古い映像と化している一汁三菜は、祖母のあーちゃん宅でお馴染みのあじごはん、畑で採れた冬瓜入りの味噌汁、肉屋さんで購入したとっておきのお肉を炊いたすき焼き、菜っ葉と人参のおひたし、きゅうりにキャベツ、レタスのカットサラダ。

使われた食材のうち、野菜類は殆ど家の畑から収穫したもの。幼心に畑があれば料理が沢山できる、という単純な方程式が出来上がっていた。

実家は両親が共働きだったため、どうしても一回の食事でおかずの品数が少なかった印象がある。カレーライス、肉じゃが、丼ものなど、一品でお肉も野菜も摂れる料理が多かった。作り置きで大量に作られることも日常的。畑を持つ家庭も減り、誰もが時間に追われる生活となっているなか、料理に時間をかけられなくなるのは仕方のない傾向だと思う。

大人となって京都で暮らす今、祖母よりも両親のスタイルを受け継いで大皿一枚で終わる料理が定番化している。これはこれでお腹も満足するし食費の節約にもなり、何より洗い物が少ないのが理想的。作品制作に追われる時はスーパーのお惣菜が空腹を満たすスーパーヒーローとなる。


先日大阪へ出かけた折りに入ったカフェにて、久しぶりに「一汁三菜」を堪能した。三を通り越して「一汁六菜」・「一汁十菜」を看板にしているお店。店名どおりもぐらの隠れ家のような奥まった場所に、こざっぱりと流行をほんの少し取り入れたような内装。お昼を少し過ぎたあたりだったが、雨宿りで駆け込んだ小鳥みたく華やかな若い女性客が集まっていて、隠れ家にしては賑やかな空間となっていた。

豆腐と鶏のヘルシーハンバーグを中心に、お芋のテリーヌ、キャベツと赤かぶの漬物、いかとブロッコリーのオリーブ和え、大根の煮物、特製青汁、豚汁、主食は白米か十六穀米か選べる。毎日副菜の献立は変わるようで、ホームページに掲載されていたものと異なっていた。

店員さんお勧めの特製青汁を一気に飲み干す。独特の苦味の後に果物の甘さがじんわり追いついてくる。ひょっとしたらキウイが入っているかもしれない。

温かい豚汁の具材は掌サイズのお椀にごろごろと溢れそうにあり、ひんやりとした和物や漬物はシャキシャキと噛み応えがあり、同じくもちもち食感の雑穀米との相性が良い。主菜に躍り出ているハンバーグも厚みと中身が濃縮された一品で、お腹の中で膨らむような感覚。

「すっごい満足!」

「お腹いっぱいだね~。」

一品は確かに少量だが、豊富な味の種類と食材の素材感がひと口一口を新鮮なものにしている。祖母の手料理の記憶と目の前の御膳料理が記憶の中でリンクした。

一汁三菜の楽しみ方は舌に託されているのかも。

追加で注文した野菜の蒸籠蒸し。野菜の甘みとほろ苦さとともに、特製のドレッシングや合わせ塩でいただく。

この日のランチタイムでは「一汁七菜」をじっくり味わった。




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