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執筆者の写真ユウキ サクタ

『音色と言語』

先日初めて、Predawn のライブを見に行った。ライブハウスにしては珍しい(のかな?)、天井にシャンデリアのぶら下がるこじんまりとした空間で、ドーム球場でのライブや芸術センター大ホールでのコンサートと比べるとシンプルな舞台セット。

ライブ開始に合わせて、舞台袖からミュージシャン3人がトコトコとやってきて、観客はパチパチと拍手で迎える。私は注文したジンジャーエールが残っていたため、グラスに優しくパタパタと拍手。

ギター、ベース、ドラムの奏者が構え、演奏が始まった。淡々とささやくように歌が音楽に乗っていく。照明の光が曲の流れに合わせて少しずつ変化していき、歌声が視覚化されているようだ。

また使用楽器も独特で、基本はギター・ベース・ドラムなのだが、時にはコントラバス、後半はピアノや掌サイズの小さな楽器(名称分からず)、今までのライブツアーの固定概念をひっくり返すひとときだった。

中でも印象的だったのは、アイスランドのロックバンドSigur Rósの『Svefn-g-englar』という楽曲をカバーで披露したこと。(FUJI ROCK FESTIVALで何度も演奏経験があり、音楽通なら誰でも知っているバンドだそう。)

カバー曲は当然アイスランド語。普段の生活では滅多に耳に入ってこない、英語とも日本語とも違う発音と息づかい。こんな言語もあるんだ。私にはメロディに乗っている声の‘楽器音’だけど、世界には、この音をちゃんと『言葉』として受け取っている人々がいる。

村上春樹さんのアイスランドの紀行文にて、アイスランド語は大陸から大きく隔てられた小さな島国という土地柄、1,000年以上言語の形態が変わっていないと記されていた。だからこそ人々は母語にすごく誇りを持っているのだそう。

「前のライブではポルトガル語の曲を歌ってたよ。」

言語と音楽への探究心が創作源なのかもしれない。

Predawnは、シンガーソングライター清水美和子さんのソロプロジェクト。英語や日本語で綴られた哲学的で主観的な日常と虚構が入り混じった印象の歌詞と、アコースティックな優しいサウンドが特徴的。レコード音源も作成していて、個人的にレコードを身近な物にしてくれたミュージシャンだ。


アンコール演奏も終わり、20:00過ぎにライブ会場を後にした。日本よりも高緯度なこの地は、7月でも長袖が必要な涼しい気候。白夜の季節で街中も昼間のような明るさ。どこか遊びに行きたいな。(しかし、アイスランドは夜の時刻には全てのお店が閉まっている。このご時世、あまり夜遊びは好ましくない。)夜中の日光を浴びながら、帰路へと着いた。




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