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『非日常プレート』

  • 執筆者の写真: ユウキ サクタ
    ユウキ サクタ
  • 9月25日
  • 読了時間: 2分

普段と異なるプレートは味覚にも影響を与える。定番なメニューの集まりでも、盛り付けるお皿が変わるだけで新鮮な視覚情報が入り、より細かな味付けを感じ取ることができるからだろう。


「今夜は飛行機の機内食を再現してみた!」

エストニアの旅から帰国して数日後、相方の創作レシピに新しい抽斗が追加された。

「機内食でしか味わえない美味しさと高揚感てあるよね?」

気になる中のメニューは……。

【マッシュポテト、スクランブルエッグ、マカロニサラダ(千切りキャベツ添え)、豚肉のカレー炒めご飯乗せ、ジャーマンポテト、ブロッコリーの粉チーズ和え、ロールパン、おまけのエストニア土産のチョコ菓子】

わざわざ百均でパックの弁当箱と、機内食についてくるような使い捨てのアラカルトを購入し、おまけのお菓子を添えるという徹底ぶりである。パックに猫の似顔絵を描いたのは遊び心らしい。

つい先日、飛行機で機内食の洗礼を受けてきただけあって、なかなかの再現度だった。

私自身は久しく飛行機の長旅を経験していなかったが(大学院時代に友達とイタリアへ行ったのが最後)、パーソナルスペースギリギリなエコノミーの限られた狭苦しい空間で過ごした時間を、細部に至るまで妙にリアリティを伴って思い出していた。食事前に見ていた映画、使い捨ておしぼりの温度、熱でふにゃふにゃになった紙パックの質感。確かあの時のフライトは仁川空港を経由したから、辛味の効いたプルコギライスが主菜として詰め込まれていた。本場の辛さはこんなもんじゃなかったが。

「ああいうのってメインの端に、にんじんとかブロッコリーとか何にも味付けしてない茹で野菜がトッピングされてるでしょ。」

記憶を探り当てるより先に答えを放り込まれた。

「あとジャガイモ!定番だよね~。」

機内食ごっこを楽しんだ後、ふと気になってビジネスやファーストクラスの機内食プレートを調べてみた。さすが別世界。いきなり豪華な御膳の画像がトップに出てきて目が点になった。五つ星レストランのコース料理にも引けを取らないクオリティ。実際、有名シェフが監修したものや、産地からこだわって選ばれた食材、希少価値のある素材、それらをふんだんに使用した華やかなメニュー、各国のプライドとブランドを全面に押し出した創作料理が豊富に紹介されていた。

でも、この料理を空の上でいただきたいか?と、問われれば……。


猫に小判、馬の耳に念仏だろうと構わない。目の前の再現プレートを手に取って、

「機内食はやっぱこんな感じの方が良いね。」

我々の思考は満場一致した。

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