18時、夕焼け小焼けが過ぎ去って辺りがすっかり暗くなる。
この時刻に住宅が敷き詰められた小道を歩いていると、四方八方から美味しいものが漂ってくる。
夕食の匂い 通りに満ちてゆく
生活リズムやスタイルが多様化している今、夕食をとる時刻は家によって様々。実家では両親が共働きで夕食が20時過ぎになることが多かったが、祖父母宅でのお泊まりでは17〜18時に取っていた。それでも各家庭の‘夕食の匂い’が外にまで香るゴールデンタイムは、昔から変わらず18〜19時を維持し続けている。(あくまで私個人の印象です。)
煮込み料理、焼き物料理、和食、洋食、中華、最近はエスニック系の料理が香ることも増えた。
定番の肉じゃが、すき焼き、カレーは日によって、また家ごとに少しずつ匂いが違う。醤油だったり鰹の出汁が強かったりする。寒い寒いこれからの季節には、鍋料理やおでんが‘夕食の匂い合戦’に登場してくる。こちらはさらに種類が豊富。寄せ鍋、豆乳鍋、味噌煮込み、カレー鍋、キムチ鍋。味噌おでんは名古屋のご当地グルメなのだと京都に引っ越してから知った情報。
焼き物料理でも各家庭の個性が出る。ソースが基盤のお好み焼きか、それとも昆布だしの効いたお好み焼きか、もしくは醤油か?具材まで選択肢を広げたらきりが無い。焼きそばはソース派?それとも塩焼きそば派?先日はレモンの酸っぱい匂いとともに香ってきた。
加減が難しい焼き魚は香ばしさと焦げてる匂いがしてハラハラする。シンプルな味付けの塩焼きは魚の旨味がストレートに伝わる。魚の種類までは分からない。この時期だと鰤や鱈かな?
少しピークは過ぎたが、炊き込みご飯の匂いが辺り一面に広がった時もある。あーちゃん(母方祖母の呼び名)の‘あじごはん’が恋しくなった。
西洋料理も負けてはいない。赤ワインをじっくり煮込んだデミグラスソースの煮込みハンバーグやビーフシチューは、少しだけ贅沢な余韻に浸れる。今月はクリスマスがある事を思い出させる。ということは、そろそろ骨つきチキンや唐揚げの匂いが溢れてくる頃……。
匂いが強烈といえば中華料理は外せない。麻婆豆腐、青椒肉絲、回鍋肉。にんにくと香辛料の効いた安定の匂い。餃子、焼売、小籠包などの天心料理も魅力的。
エスニックの代表格、ナンプラーやパクチーは少量でも匂いが遠くまで届く。カオマンガイか?ガパオライスか?いや、ひょっとしたらタイカレーかもしれない。(タイ語では‘ゲーン’。タイカレーというのは日本語での造語なのだとか。)
記憶に刻まれた‘夕食の匂い’を掘り起こしてみる。これだけ大量の夕食が食卓に並んでいるのを想像し、早くも空腹を知らせる音が鳴る。
——今夜は何を作ろうか?
夕食の匂い 通りに満ちてゆく
これは好きな曲の好きな一節。この情景を実際に体感できる小道がたくさんあるのが嬉しい。
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