だんだんと春らしい陽気が淀周辺にも芽吹き、歩いてると少し汗ばむようにもなってきた。ハイデンバンも太陽光からの入射角が高くなり、日照時間が刻一刻と長くなっている。
が、ここ最近奇妙な現象が起きている。私の住居兼アトリエ部屋は2階にあるのだが、朝10時頃に夜勤から戻って扉を開けると、まるで洞窟に迷い込んだかのようにひんやりする。疲労困憊の心と身体に、この温度差は少々堪える。
南北に細長く建てられているハイデンバンは、午前が駐車場や花壇・鉢植えスペースに日の当たる貴重な時間帯。バイクのエンジンを切りヘルメットを外すと、ぽかぽかぽかと、顔の周りがゆっくりと温められる。
そこからの落差が激しい。
重厚な鉄扉と廊下を隔て、西側に位置する部屋はまだ日陰のなか。さらに現在、窓の真前に巨大なキャンバス作品が置いてあり、日の光を遮っている。おかげで外の体感温度からは5℃ほど低下しているのだ。
部屋の温度計は大体12, 3℃を指している。真冬の氷点下と比べたら随分と過ごしやすいはずなのに。
「寒っ!」
帰宅して第一声に呟くのが、未だこの一言。なんて季節外れな叫びだろうか。
ただ、この‘ハイデンバン温度逆転現象’は何もマイナス面ばかりではない。
ある朝、室内の微妙な寒さに我慢できず、読書中の本を持って1階外に降りた。この日は先週末の雨が嘘のように晴れ渡り、伸びっぱなしの木々や雑草は雨雫の名残りと日光を浴びて、文字どおりきらきらしていた。雨風に晒されていたはずのバイク座席はすっかり乾いていた。ハンモックにダイブする子どもみたいにひょいと座席に飛び乗って、読みかけのページを捲る。自然光の下、ぬくぬくぬくと暖まりながら一気に読了した。
外での読書も気分が良い。本の世界への旅と、周囲の開放感が相乗効果をもたらしてくれた。
また、1階の作家さんとも少しだけ会う機会も得た。それぞれの制作リズムがある中、全員と対面できたのはミラクルな出来事だ。
「あ、お疲れ〜!」
「お疲れ様です。」
「お疲れさまー。」
「お疲れで〜す。」
「おつ。」※どれがどの作家さんの一言か分かる人はハイデンバン通ですね。
部屋が寒ければ外で読めば良いんだ!新たな楽しみを発見した瞬間だった。
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