落とし物、と言えるのか謎なものをまた自宅近くで発見した。
マンションへ入る手前の小さな路地の片隅に、老舗醤油メーカーであるキッコーマン商品のこいくち醤油が二本、くっつき合って佇んでいる。梅雨入りする前には既に置かれていて、先日の雨にも打たれたおかげで水滴がびっしりとついていた。よくよく見ると、片方だけ少し量が減っている。うっかりこぼしたのか、はたまた料理で少し使ったのだろうか。それなら何故回収もせずに、でこぼこコンクリートの上で風雨に吹きさらしの状態のまま放置しているのだろう。また、片隅に二本というこの状況が落とし物にしては畏まり過ぎているというか、お供え物のように丁寧な扱いをされていそうな印象を醸し出しているのが違和感ある。ちなみにちょっと歩いたところに、祠に祀られたお地蔵様がある。交通安全や子宝祈願を司っているらしい。ちゃんとお地蔵様の面前にお供えすれば良いのに。
「お供え物とは限らないでしょ?猫避けとか泥棒避けとかに使ってるんじゃない?」
相方は獣対策として置いているのでは、という意見だった。野良猫対策として、猫が嫌がる臭いを散布していく方法がある。使われるものは主に酢、ハーブ、にんにくや唐辛子といった強い刺激臭のするものが多い。醤油は全く当てはまらない。
が、悶々と考えてるうちに我ながら冴えた考えに行き着いた。
あの黒い液体の中身は醤油ではないかもしれない。猫避けの際、竹酢液や木酢液を使うことがあるが、これらも茶~黒褐色のものが多く醤油と見間違う可能性もある。ホームセンターで手軽に入手できるから使用済みの醤油ボトルに入れ替えて、いつでも使えるように道の隅に置いているのかもしれない。
答え合わせをしたくなった帰り道、薄暗い道の隅っこに屈みこんで、目立たないように置かれているボトルを観察してみた。
残念ながらこの閃きははずれの可能性が高いようで……。何故なら一本は未開封で注ぎ口にしっかり包装がされたままになっていて、中身の液体もどう捉えても醤油にしか見えなかった。表面パッケージの説得力が視覚的に影響を与えているかもしれないが、猫避け液体とは程遠い色合いだった。
あっけなく閃きを放棄して、また新たな謎を見つけてしまった事に悶々と考える日々が巡りそう。
「あの二本、時々左右が入れ替わってる。」
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