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執筆者の写真ユウキ サクタ

『神社の日常〜七五三〜』

亀戸天神社へお参りした時のこと。ちょうど七五三の時期で、着物やスーツでめかし込んだ子ども達が歩いている場面を沢山見かけた。東京駅から程近くスカイツリーも視界に大きく入り込むくらいの観光地真っ只中に位置しながら、あたりは閑散としていた。大通りから一歩入り込み、住宅街に守られた神社の熱気は陽射しの温もりだけがあり、時間がゆっくりと流れている。

神社をぐるりと囲う生活道路。近所の2~3歳くらいの保育園児達が先生に連れられて、はたまた大きな乳母車に数人乗せられて、いつものお散歩コースなのか、覚えたての言葉を並べて懸命にお喋りしながら歩いていた。日向と日陰が交互に道路を覆っている。彼らの後ろ姿もそれに倣い、カメレオンのように明度と彩度が変化した。

亀戸天神社の見どころである梅の木や藤棚は、季節を終えて黄緑色の葉の屋根を作り、来年までのお休み期間に入っている。花の咲かない時期でも溢れる枝は健在で、晴天の恵みをふんだんに受けて背景の青色とのコントラストが鮮やかだった。地面に記された木漏れ日をよく見ていると、すこしずつ動いていくのが分かる。なんとなく方角を察知できそうな気がして、駅への道筋をぼんやり想定しておいた。

本堂の前では秋に開花を迎える菊が飾られている。視界を赤・白・黄色、葉の緑と背景の青、定番の色彩が勢揃いした。祖母の畑で見た懐かしい小菊や、まだ開花していない貴重な品種の菊もあった。花言葉は高貴、高尚。その花姿から付けられた意味だそう。

菊まつりの空間を、慣れない草履で辿々しく歩いている女の子とすれ違った。淡い水色の布地に色とりどりの花が描かれた着物と赤色の帯、髪は日本髪に結い上げられていた。古典的な描きの花だが、下地の水色が柔らかくポップで親しみやすい印象を放っている。着物の花は菊だったような気がする。

「うわあ、可愛い。」

「そうでしょう!可愛いんです!」

言い終わらないうちに女の子のお母さんらしき人が、カメラを構えながら誇らしげに言葉を被せてきた。

(マスク越しにため息まじりに出た言葉をよく聞き逃さなかったな、と振り返って思う。)

当の女の子は手に持った千歳飴に興味津々だった。

紺色のスーツを着た男の子兄弟、紫色をベースに艶やかな大輪の花が施された着物を着た女の子、袴姿で参拝していた男の子など、何組もの親子が此処に祀られている天満大神(菅原道真公)に会いにきていた。ハロウィンやクリスマスが大々的に取り上げられるが、昔から在るこうした行事も脈々と続いていることに感慨深くなる。


亀戸天神社は九州の太宰府天満宮と共に、菅原道真を祀る歴史深い神社。東の宰府として「東宰府天満宮」と呼ばれていたが、昭和11年に「亀戸天神社」と正称。梅、藤、菊の季節はもちろん、近所のコミュニティや憩いの場としても機能しているようで、ささやかな人の気配が常に感じられる。都会ならではの喧騒や騒音は控えめで、下町の古き良き空間が残されていた。




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