まるで花びらをはらうかのようだった。
信号待ちの時、一つ前で停車していた車の左サイドウィンドガラスから優雅に現れた腕。手入れの行き届いた長くしなやかな指先が弧を描いた。その環から外れるように不格好な物体がポロポロとこぼれ、焼けつくアスファルトに堕とされた。
呆気にとられてる間に車は発進。置き去りにされた可哀想な物体は、灰まみれで短くなった煙草の吸い殻。
無駄のない華麗なポイ捨てスタイルに、きっと普段からあちらこちらに灰の吹雪を降らせてるんだろうな……と、察してしまった。
それ、誰が集めると思ってんの?
もう10年以上前になるが、地元の小学校・中学校では毎年‘ゴミゼロ’を謳い文句に地域清掃の行事があった。主に学校周辺・通学路・地域憩いの公園・神社に落ちているゴミや落ち葉を拾っていく作業。
はてさて、記憶を掘り返していくと不思議なのだ。拾ったゴミの内訳は大まかに空き缶、菓子袋、煙草の吸い殻。時々酒瓶がどどーんと出てくる時もあった。
せっせと集めながら、思春期真っ只中だった私達は思う事があった。
「なんでうちらがこんな事するわけ?」
空き缶は大抵ビールだし、タバコなんて未成年は禁止だし、酒瓶なんて子どもが買えるわけない。明らかに大人が捨てたであろう物体を、炎天下の中どうして私達が拾わないといけないのだろう??
理不尽という言葉の意味を、身に染みて感じた行事だった。
『ゴミゼロ運動?今年は知らんけど去年はあったよ。』
いや、まだあるんかい。
実家からの返信に、思わずツッコミが出てしまった。
悲しいかな。先日目撃したポイ捨て人の手は、私のちんちくりんな掌よりずっと綺麗な造形だった。(視力2.0を少し恨む。)
どんなに眉目秀麗、容姿端麗でも行動に品格を欠いてはもったいない。
人の振り見て我が振り直せ——。私ももう大人側だから気をつけなければ。
あとは…、今住んでいる地域の子ども達が、理不尽な後片付けを担わされていないといいけど……こればかりは分からない。
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