料理の本などで、蜂蜜を使ったレシピをよく見かける。一人暮らしを始めるまで、蜂蜜の役割はホットケーキの上にかける飾りつけだけというイメージだったが、カレーの隠し味や塊肉の漬け込みの調味料など様々な用途があることを知った。糖分の他ビタミンやミネラルを含み、疲労回復・腸内環境を整える効果もあり、昔は薬用として重宝されていた。(服薬だけでなく患部に塗布する治療法もあったそう。)
古代史から人は蜂蜜を養蜂・採集する技術を手に入れていて、歴史的に最も馴染み深い甘味料の一つ。
イギリスには「The history of honey is the history of mankind (蜂蜜の歴史は人類の歴史)」という諺があるほどだ。
もちろん、日本にも蜂を取り入れた諺がいくつか存在する。蜂蜜を使う度思い浮かぶのは「泣きっ面に蜂」。不運な事が立て続けに起きる様を表した有名な諺。
不思議な事に‘不運’は防波堤が決壊したかのように、一気に流れ込んでくることが多い。一つの不運を受け取ったら、何処からともなく大変な出来事が次々と豪速球で投げつけられる印象。ただし、てんやわんやしつつも問題が解決した後は、「なんであんな些細な事でパニックになってたんだろう?」と思うこともある。一言で‘不運’と表しても、個人や状況によって認識は変わってくる。そもそも「泣きっ面に蜂だ!」と叫ぶ元気があるうちは、どうすることもできない‘不運’ではないのかもしれない。言葉一つで、気持ちの方角は簡単に変わっていく。諺の役割は、人のメンタルを前向きにする遊び心も含まれているような気がした。
最近は無糖ヨーグルトに蜂蜜を一滴垂らしていただくのがマイブームになっている。ここ最近の「泣きっ面に蜂」な出来事といえば、腹痛がちょっと長引いた日に大雨が重なり、さらに仕事へ向かうため厚手なコートの上から雨合羽を着込んでモゴモゴした状態でバイクを運転しなければならなかったことだろうか。赤信号に頻繁に足止めされ、後続の車にはクラクションを鳴らされ、さらに無理な追い抜きをされ、疲労困憊のまま仕事を始めなければならなかった。そして追い討ちをかけるように仕事場で勃発する複数のトラブル。職場の特性上、此処は仕方のない点である。
嵐が過ぎ去りゆったりとした朝食時間に食べる蜂蜜ヨーグルトは、素朴で格別な美味しさがある。「泣きっ面に蜂」な日を乗り越えた自分へのご褒美。
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