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執筆者の写真ユウキ サクタ

『此処は私の居場所じゃない』

再び、‘不要不急の外出自粛’の雰囲気が漂い始めている。

先週4月9〜12日の日程で、私は神戸へツーリングの旅へ出た。一応の目的は、六甲山で行われる現代アート展覧会の公募展示会場下見会。

京都から神戸へは、大阪府を横断するルートで向かう。こんな時に3つの府県を往来するなんて……と、眉を顰める人もいるだろう。

もちろん無防備で飛び出したわけではない。アルコールとウェットティッシュと大量のマスク持参、手洗い・うがいはこまめに、施設に入る時と出る時は手指の消毒を徹底して、そして基本のソーシャルディスタンス。

普段以上に気を使ったと思う。


率直な感想。この旅を実行して良かった。

六甲山ではこの季節に珍しいほどの晴天に恵まれ、展覧台から六甲アイランドだけでなく、大阪湾を行き交う船、淡路島と紀伊半島の境目が水平線の彼方にぽっかりと浮かんでいるのも見えた。

「普段なら霧が濃くて滅多に見られない景色です。今日は実に運が良い。」

山の天気は変わりやすいと言うが、その心配が杞憂に終わる程、穏やかで陽に満ちた時間だった。

陽の要素を作り出したのは天候だけじゃない。

ツーリング途中で立ち寄ったカフェ店員も、ゲストハウスの管理人も、お話好きのたこ焼き店主も、喫茶店のベテラン看板娘も、地元愛溢れる喫茶店マスターも、美術館の学芸員も、酒蔵施設の案内人も、ご当地ラーメン店の店員も、そしてほんの一瞬すれ違っただけの地域の市民も。誰もが朗らかに生き生きと、今の神戸で暮らしていた。

何より京都市ナンバーのバイクに乗っていても、白い目で見られるような事はなく、優しく歓迎された。此処で普段から流れている時間の光景を、垣間見ることができた。

僅かな文章では書ききれない沢山の記憶を持ち帰ってきた。


ゆったりした日程でも見られなかった、行けなかった場所はある。次に期待して、次があることを期待して、帰路につくのも一つの旅の形。


暖かい風景と温かい人に恵まれたが、やはり‘此処は私の居場所じゃない’。そんな違和感は常に感じていた。切ないけど心地良い、不思議な感覚である。




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