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  • 執筆者の写真ユウキ サクタ

『桜鑑賞会』

淀の河津桜が満開を迎えた。

二月の中旬頃からぽつぽつと花びらは開き始めていたが、この時期は突き刺すような冷たい風がまだ活発に吹いていて、散策する私はというと身を守る分厚いコートとマフラーが手放せない状態だった。

早咲き桜と呼ばれ寒さと隣り合わせの華やかな見世物として、生を受けたことを意識しているように、曇り空の隙間から入り込んでくる小さな太陽光をスポットライトに小枝から真っ直ぐ背筋を伸ばしていた。

三月、そんな桜に魅せられているのは地域住民だけでなく、遠路はるばるやってくる観光客もいた。今年は特に国際色が強い。アジアやヨーロッパ圏の団体客が観光旗印を掲げて淀水路に集まっていた。聞き馴染みのない言語の音が飛び交って国際空港のフロアよりも多言語密度が高そうだ。目線より低い位置にも咲く桜に子ども以上にはしゃいで散歩している老夫婦、桜吹雪を淡々と撮影してSNSに発信し続けているインフルエンサーらしき人々、桜が描かれた着物を着こなし互いに撮影し合っているカップルは海外からの観光客だろう。

さて今此処にご近所さんはどのくらいいるのだろう?四年近くも淀を拠点としているのに、此処がこれほどまでの観光名所だったとは気づかなかった。スケッチブックと筆ペンを片手に、重ね着した絵の具だらけの作業着と着古した黄色のマフラー、いかにもちょっと散歩に出てきた地元の人感満載の私以外、ほとんどの人がお出かけ向きのこざっぱりしたスタイル。桜鑑賞の集まりに一番場違いな印象を放っているのは私かもしれない。

1kmほどある淀水路に植えられている河津桜は、大木より素朴な庭木といった表現が似合う。景観のため、ある程度剪定され整えられた枝。途中で生長を方向転換された跡が少し痛々しい。艶やかなピンク色の花びらでも隠しきれない箇所をいくつも見つけた。決して粗探ししているわけではないのだが。なんとなく今年の色彩は脈打って生きている血潮を連想させた。去年撮影した画像と比べると、今年の花びらは一層ピンク色に染まっている。いや、去年が白過ぎたのだろうか?


京阪電車の主要駅のアナウンスでも「淀水路の河津桜」を宣伝している。見頃は三月下旬までだそうだが、葉桜へと変化していく光景も次の季節の流れを暗示していて趣深い。

あと桜餅に色相が似ています。




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