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執筆者の写真ユウキ サクタ

『時速30kmの視界』

愛車の125ccバイクの調子が悪くバイク屋さんで状態を見てもらう間、代車の50cc原動機付自転車を借りた。

原付の法定速度は時速30kmまで。(何故か60kmまでスピードが出る仕組みになっているが。)

車と横並びになるほどハイスピードで運転するようになった私を、ほんの4ヶ月前の私が見たらどう思うだろうか?‘慣れ’というのはどんどん許容範囲を広げていくのだな、と改めて感じる。

バイク屋から自宅へ帰る道中、左車線の左端に寄り、どんどん追い越してゆく車の風をダイレクトに受け止めた。風に薙ぎ倒されないようにお腹にぐっと力を込める。

——時速30kmってこんなにゆっくりだった?

車と相反するように、周りの風景は緩やかに後方へスライドしてゆく。国道から小道に入り込んでからは、時間の流れまで変わったようだった。馴染みの土手でジョギングをする人、家の前で車を掃除している人、玄関前に置かれている花壇や鉢植えからは色とりどりの花が開花し、上空ではトンビや雀の群れが飛んでいた。駄菓子屋の看板や交通安全の文字も読めた。

見慣れた道のりのはずだったが、初めて見つけたものがたくさんあった。

‘急がば回れ’と、上手い諺が作られたものだ。

スムーズな物流、迅速な対応、短時間での長距離移動…などなど、ある種のスピード感が快適な生活のための要素となっている今、ちょっと力を抜いて、見落としたものがないか振り返ってみるのも楽しい。

バイクは一晩預けただけで、無事手元に戻ってきた。そして、相変わらず私はこのバイクで大通りを飛ばしている。(※ちゃんと速度は厳守してます。)

だけど、たまには「ちょっと力を抜いて」周囲を見てみよう。

すぐ足元に、面白い発見が転がっているから。




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