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『万博散歩』

  • 執筆者の写真: ユウキ サクタ
    ユウキ サクタ
  • 4 日前
  • 読了時間: 4分

駆け込みで大阪関西万博へ行ってきました。

最寄りの夢洲駅に到着したのは午前8時。

朝9時に開場するゲートの前では既に長蛇の列ができていて、椅子や敷物を持参して長時間待機に耐えてる人、おにぎりやパンで手早く朝食を取ってる子(一体何時から並んでいたのだろう)、関西万博公式キャラクターミャクミャクのグッズで全身をコーディネートしている人など、周囲の気合いの入りっぷりがもの凄かった。

西ゲートから入場するチケットを手に、ようやく会場に足を踏み入れたのは9時40分過ぎ。テーマパークでありがちのファンシーなBGMは一切流れてなくて、熱中症対策と夜間のシャトルバス利用についてのお知らせが無機質に何度も流れていた。

予約制のパビリオンは残念ながら抽選に外れてしまい、人混みの隙間を縫って、世界をコンパクトに纏めた万博という空間をただただ歩くことにした。

最初に入ったのはコモンズ館。複数の国々がブースごとに自国の文化や技術を紹介していて、民族衣装や伝統楽器などの展示、ブース全体を使った没入型の映像での伝統舞踊、国を代表する世界的スターの等身大人形、日本との友好関係をパネル展示している国もあった。コモンズ館A~Fまで90を超える国と地域が参加していて、初めて知る国名や、意外な国がお隣どうしだったりと、地理や歴史的背景の新たな知識で溢れていた。衣装の刺繍や布地は当然ながら同じものなど一つもなく、時間をかけて伝えられてきた地域独特の手作業の重みを感じる。ブースの隣りにすぐブースがあって、広く浅くたくさんの国に触れることができた。

予約抽選に外れたパビリオンの前を物欲しげに通り過ぎ、再び当てもなく歩いた。黙々と歩くだけでもお腹は空くものである。オマーンパビリオンのカフェコーナーで購入した伝統菓子「ダズィーズ ルブ タマル」とバラの花びら入りのローズアイスで糖分を補給。ペアリングとして珈琲が欲しいところだが、カフェインレスが見当たらなかったので断念。もし飲めたのならマンデリンのホットが飲みたかった。

個性的でへんてこで奇抜なパビリオン建築。一度見たらどの国の建物なのかすぐにインプットできた。手編みの麻紐籠のように木材を組み合わせたポーランド館、五線譜の曲線を前面にアピールしてるオーストリア館、特大鏡で錯視効果を狙ったタイ館など、中に入れずとも外から眺めるだけでも見応え満載だった。海と太陽をシンボルにしたスペイン館は、全体が階段構造となっていて、パビリオンそのものが憩いの場のような雰囲気だった。日差しが強くなければ此処でひと息の珈琲をいただきたかった。

西ゲートから入り東ゲートが近づいてきたところで、ロングエスカレーターに乗って大屋根リングを探索した。さっきまで自分たちが立っていた地上を見下ろすと、日差しを反射した地面よりもその上を行き交う多国籍な人々のシルエットの割合が多かった。日傘がくるくると歯車みたく流れて移動したり、パビリオンに沿うように微動だにしない人々の塊が水中のナマコのような印象だった。

リングの道は高さの影響もあってか海風が心地良く吹いて、日差しの強さに比べて暑さはそこまで不快ではなかった。日焼け対策で引き続き日傘を差していたが、時折海風がパワーアップして折りたたみ傘の骨組みを掻っ攫おうとしてきた。途切れることのない人混みの中、日傘の梅雨先がぶつかり合ってすれ違う度に何度も頭を下げあいっこした。リング道沿いにはところどころ花壇が設置されていて、お花好きには至福の道のり。途中で上下二手に分かれ、さらに高さが出ると万博会場の外側、大阪湾の景色も見渡せた。ウォータープラザを見下ろす地点では右も左も水面の景色。リング道だけなら緑地公園のしっかり舗装された遊歩道と見分けがつかない。でもふと外側の景色を見た時に、空の近さ、海の水平線、アバンギャルドな建物の存在感で、今自分がいるのは期間限定の体験型世界地図の上なのだと実感する。

この空間はあと僅かで解体される。多少面影が残るだろうが、この日私が見て、感じて、インプットした景色は来年にはもうない。まさに‘諸行無常’の言葉がぴったり。

こうした国家プロジェクトは大抵賛否両論が湧き起こるが、なんだかんだその年を彩る大きな要素となるものだ。総じてこの散歩をめいっぱい楽しませてもらった。

大屋根リングを辿って、簡易版世界一周旅行を満喫しました。


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