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執筆者の写真ユウキ サクタ

『既視感小道』

もう一つのアトリエ、境谷小学校へ向かう道のりは、府道10号線をひたすら西に向かってバイクを運転していく。府道とは言っても周りは閑静な住宅街だったり、小さな神社が佇んでいたり、畑や竹林が広がっていたり……。ずっと昔、この光景を見たことがある。

ふと、今私はどこに行こうとしてたんだっけ?とセンチメンタルな感情が押し寄せてくる。

雨の中の運転中、また同じ感覚になった。……このままあーちゃん家に行こうかな?

‘あーちゃん’は母方祖母のあだ名だ。子どものころからそう呼ばれていたらしく、50年ぶりに再会した幼なじみからも「あーちゃんちっとも変わらんねえ!」と言われたくらい定着している。

私自身、物心ついた頃からずっと‘あーちゃん’と呼んでいて、‘あーちゃん’が所謂‘おばあちゃん’であることを認識したのは小学校高学年になってからだった。

「じいさんのことは‘おじいちゃん’って分かっとったのに?」

この出来事は親戚中の笑いの種となった。

この道はあーちゃんの家へ続く小道とそっくりなのだ。あの家は第2の実家と言っても過言ではない。連日の雨が映しだす風景演出も、記憶の抽斗を呼び起こすのに一役買っていた。周りから迫り出す木々や葉っぱのシルエットは、風に煽られ巨大な入道お化けのよう。車の後部座席から眺めていた当時、幼心には充分過ぎる恐怖心を植え付けられていた。

今は?

記憶にある入道と同じか、それ以上のものが目の前にある。それでも湧き上がる感情は、ただただ懐古のみ。此処は郷愁を目覚めさせるパワースポットなのだろうか。

あーちゃん、みゆ爺ちゃん、えりちゃんも元気にしてる?

今はまだ帰らない。もう少し頑張ってみるよ。

小道を抜け、アトリエへと向かった。




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