『山の日』が祝日の仲間入りを果たしたのは2016年。祝日としての歴史は浅く、幼少期に「なんで海の日はあるのに山の日はないのだろう?」と疑問に思った事は何度もある。
「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する。」という趣旨で制定された祝日で、山に関する特別な出来事や由来があった訳ではないらしい。1995年に『海の日』が制定されてから「それなら山の日も!」という声が広がり、紆余曲折を経てようやく制定されたのだ。
日本は国土の4分の3が山地。北海道の日高山脈や夕張山地から、東北の奥羽山脈、中部地方に広がる飛騨山脈、紀伊山地、中国山地、四国山地、阿蘇山や九州山地まで、全ての列島に山が存在している。
山には生い茂る木々と勾配の激しい獣道、湿気に満ちた空気を纏っているというイメージを個人的に抱いている。天気は恵みの雨模様。もちろん快晴の青空の下で瑞々しい景色に包まれながらハイキングした思い出も多くあるが、日本の山景色というと、しとしとと葉っぱや花に雨雫が滴り、静寂の中にも微かな生命の足音が聞こえてくるような、神聖で厳かな画面が思い浮かぶのだ。
ただし、そんな場所にいてもお腹は空いてくるもので……。キャンプ学習での黒焦げカレーライスや山荘の隠れ家のようなレストランでのワンプレートランチ、去年は六甲山の観光スポットのカフェで期間限定パンケーキをいただいたが、普段でも馴染みのある料理がより一層美味しく感じられた。(黒焦げカレーライスは自分達で初めて飯盒炊爨して大失敗したもの。)
学生時代、理科の地学分野にて樹木の根が地面にしっかりと張っていることで、土が固定され山崩れを防ぐ仕組みになっていることを学んだ。また社会の地理では、漁師が植林活動を続けている事も習った。これは山から流れてくる川の水質が魚介類の生育に大きく影響し、山の環境を整えることが巡り巡って海の生態環境を守る事に繋がるからだそうだ。
山から遠く離れた海の生き物も恩恵を受けている。もちろん私達人も沢山の贈りものを受けとっている。景色を楽しむだけでなく、木の実や山菜の食、物作りに欠かせない木材、水の恵みは生活にも欠かせない。近所を散歩している時も、景色の端にいつも山のシルエットが小さく映りこんでいたことに気づく。何気ないところにちょこんと存在感を発揮していた。
今日だけじゃなくて、今後も山からの贈りものをじんわり感じてみようか。
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