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執筆者の写真ユウキ サクタ

『宣伝広告』

京阪電車内の広告で最近よく見かけるようになったのが、四国を走るアンパンマン列車の宣伝だ。原作者のやなせたかしさんが高知出身であるご縁から、アンパンマンの大きくデザインされた電車が四国の線路を走っている事は昔から有名なお話。(実は子供の頃、家族旅行でアンパンマンミュージアムへ行った際に乗ったことがある。)

京都の私鉄で他県の路線の宣伝をするのは珍しいと感じたが、一方で阪急電車では名古屋にあるレゴランドの宣伝も兼ねて、京都からの最短ルート——京都駅から新幹線で名古屋駅、そこから私鉄のあおなみ線を使った行き方——の案内まで記した懇切丁寧な広告が掲示されていた。今まで意識していなかっただけだろうか、案外と地域に根強く密着している路線どうしは細やかな交流があるのかもしれない。

とある夕方、アトリエ帰りの京阪電車に揺られていた時、中書島駅からベビーカーに乗った女の子とお母さんらしき親子が乗車してきた。

「あんぱん!アンパン!あんぱん!アンパン!」

目元がとろんとして今にも寝落ちしそうだった子が、広告を見た途端、表情ががらっと変わりはっきりとした声量で叫んでいた。

そこまで言えるなら「アンパンマン」って言ってあげて……と心の中で思わずツッコミをいれたが、言葉を覚えたての世代は最大四文字までの音を単語として発する事が多かった気がする。(弟妹の成長過程を振り返って、よくそんな場面を見かけた。)

子ども達の誰もがお世話になるキャラクターでありながら、ある年齢に達すると途端に興味を示されなくなる、もしくは幼稚でダサいと思われるようになって隅っこに追いやられる印象が強い。思春期の反抗期に似た感覚。実際に自分自身の心情の変化として体験しているだけに、ちょっとした申し訳なさに耳が痛くなる。

あの子は一駅分だけ乗ってすぐ下車していったが、一緒にいたお母さんが「少し静かにしようね。」と宥めるくらいには「あんぱん」を連呼していた。その影響もあってか、お母さんもアンパンマン列車の広告をゆっくり眺めていた。ひょっとしたら、この家族の近い将来のお出かけ先候補になっているかもしれない。

広告の影響は老若男女問わず絶大であることを改めて確認した出来事だった。

さて、あの子の「アンパンマン卒業」はいつになるかな?




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