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執筆者の写真ユウキ サクタ

『子泣き坊や』

10月上旬に息子が誕生しました。

何でもない平凡な日にちが、その時を境に特別記念日となった。近所の産婦人科を退院してから、今までと違うニュアンスを纏った怒涛な日々を過ごしている。(徒歩圏内に産婦人科がいくつもある事に少々驚いた。子どもが多い地域だが、こうした環境が整っていることも要因かも。)

あっという間に立冬の時期を迎えて、先日一ヶ月健診のため息子と再び産婦人科を訪れた。新生児室の前を通ると、ついさっき生まれましたという形態の赤ちゃん達が、蛙の大合唱のごとく順番に泣き出すところだった。一人が泣くと隣の一人も泣き、さらにその隣の一人も泣き……この場面は自分が入院中も遭遇した。手足を左右交互にばたつかせ、何かのリズムを刻みながら仲良く泣き続けているのが印象的だった。

腕の中の息子と新生児の赤ちゃんを見比べると、たった一ヶ月でかなりボリュームに差が出ている。ふにゃふにゃしていた胴体は密度を含んでずしりと重く、抱っこの時にうっかり腰を痛めそうになる。大きな荷物を運ぶことは慣れていたはずだが、私と違う意志を持って手足をばたつかせる息子を落っことさないよう、神経を張り巡らせないといけない。ハラハラさせられっぱなしだった。

そんな私の思いなど知ったことないと、息子はどんどん重たくなる。外気浴を兼ねた散歩で外に出ると、歩く度に重みがずんずんと増していく。

「子泣き爺かいな。」

ツッコミを入れてもまだ返答はないが、そう遠くない未来に会話のキャッチボールが始まるのだろう。うっかり妖怪に見立ててしまったが、言葉が通じるまではそう大差ないかもしれない。。

病院から自宅までの帰り道。見慣れた道のりを二人で初めて歩いた。交差点の一角に佇むパン屋のガラス扉に映り込んだ姿は、街中でもよく見かける親子連れと同じだった。自分がこの立場になったことにちょっと感傷的になる。そんなセンチメンタルな気分を、子泣き爺もとい子泣き坊やの重石がプレスしていく。まるでのんびり考え事する暇なんてないぞと言わんばかりに。

これから続いていく、どたばたした賑やかで騒がしい時間を暗示させた。




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