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執筆者の写真ユウキ サクタ

『外と内の逆転現象』

ようやく猛暑の日々から抜け出して、直射日光を和らげるように秋らしい風が吹いている。昼間に外出する時も、熱中症や日焼け対策を敏感に気にする必要が無くなってきたのは楽ちんなことだ。ここ最近続いた秋雨の影響でさらに気温が下がり、窓を開けて風を通すと部屋の奥まで涼しげな空気が運ばれてくる。本格的な秋がようやくやってきた。(と思って良いかも知れない。)

今住んでいる自宅は、リノベーションされた築40年以上経過する定番のマンションなのだが、窓と扉を閉め切るとかなり密閉度が増す。騒音や隙間風の影響がほとんど感じられず、その点では快適な空間を作っている。ただ、夏から秋へ季節の変わりに入るとその密閉加減が仇となる時もある。

次第に早くやってくるようになる日の入りの時刻とともに、夕方の快適な空気感を堪能しつつ散歩や買い物から帰ってきて玄関の扉を開ける。この時、外の軽やかで涼やかな余韻を引きずったまま中に入ると温度差に少々びっくりしてしまう。

「暑っ!」

部屋の中は籠った空気が充満して湿度も高く、感覚としては初夏のあの梅雨時に似ている。荷物整理もそこそこに真っ先に窓を全開にすると、穏やかな風が部屋の空気を循環してくれてみるみるうちに体感温度も下がっていく。ただいま外より内の方が暑苦しいという逆転現象が発生中。

自宅に限らずアトリエでも窓と扉を閉めきっていると、だんだん室内温度と湿度が上昇し耐えられなくなってエアコンを稼働、なんてことも未だにあった。(外の方が涼しかったのを知った時の後悔と言ったらない。電気代が余計にかかってしまうので……。)

毎年この時期は、こうした逆転現象に悩まされている。

外が涼しいのならずっと窓を開けていれば良いじゃないか、との考えが浮かぶが防犯やプライバシーについて考えると現実的ではない。壁を隔てたすぐ近くには、全く異なる生活スタイルを送っている他人が何人もいて、それぞれ箱詰めされたように限られた空間で暮らしている。夜には小さな虫が明かりめがけて集まってきて、また別の問題が起きてしまう。

こんな時はいつも祖父母宅の古めかしい日本家屋が恋しくなる。畑と庭が道路からの視界を遠ざけ、網戸と簾をかけて窓を開け放つと、だだっ広い家の隅々まで秋風が澱みなく届いていた。マンションとの根本的な構造の違いが感じられる記憶だ。

今朝も起床後、真っ先に窓を開けた。久々の晴天。日差しは眩しくても涼しげな気候は保たれている。そして寝ていた部屋の方が暑かった。




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