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執筆者の写真ユウキ サクタ

『原点回帰』

アトリエを片付けていた時、ドローイングボックスからぼろぼろに古びた作品が出てきた。2004年1・2月用の縦長カレンダーの裏面にびっしりとうさぎ、ウサギ、兎……。

2004年といえば小学4年生くらいだったか?うさぎは子どもの頃によく描いていたモチーフだ。耳が長いという特徴的なフォルムと、言葉では馴染み深くても実際に目にする機会はほとんどなかった動物。

地元の小学校にもうさぎ小屋があり何匹か飼育されていたはずだが、その小屋が校舎裏側の職員専用駐車場のすぐ側にあったため、生徒は原則立ち入り禁止になっていた。安全面のためだとは思うが、6年間も通っていてどんなうさぎが飼育されていたのか、全く記憶に残っていない。唯一覚えているのは、1年生の時に学校探検という授業で敷地内を見て回った時に、遠くから「あれがうさぎ小屋だよ。」と教えられたこと。他に飼育されていたカモや亀は、小屋の目の前まで行って観察できたのに、うさぎだけ姿を見せてもらうことができなかった。

「あそこに皆さんは行ってはいけませんよ。」

禁止されると行きたくなるのが人間です。毎週誰かしらこっそり見に行って、でもすぐにばれて先生の怒号が飛んでくる、そんな光景を校舎の窓から眺めていた。

2階・3階の窓から見下ろすと、確かにうさぎ小屋はあった。でもほんとうにうさぎがいるの?じつはいないんじゃない?

居るのか居ないのか分からないうさぎの存在が、私の心の中の比重を占めていった。当時使っていた自由帳の見開きページめいっぱいに大きなうさぎを1匹、その姿を埋め尽くすように小さなうさぎ達を黙々黙々と描いた。みられないならかけばいい。大人から禁止された事を破る度胸も、フットワークの軽さも持ち合わせていなかった幼い自分は、紙に向かってうさぎを見たい欲求をぶつけていた。この『うさぎの大群』シリーズは5年生頃まで続けて描いていた。

アトリエで見つけたものはおそらくシリーズの集大成で、一番大判サイズの紙に描き込んだものだ。よくよく見ると但し書きのようなメモ、ちょっと大きめな群れの長のようなうさぎ、船や観覧車に乗っているうさぎもいた。大人の視点で客観視しても、ただのうさぎがかなりの圧を放っている。この作品を描き切った後、ぴたりとこのシリーズを描くのを止めてしまった。ちょうどバスケットボールに夢中になりだした時期と被っている。

今でこそ兎からは卒業しているが、描くきっかけや対象物がしつこく気にかかる視点は未だ健在。制作の原点は児童期から変わっていませんでした。




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