個展の搬出作業のため、久々に早朝から外出した。
自宅から最寄駅までの道のりは何度も見てきた景色。気温がぐっと下がって、道行く人がコートやマフラー、手袋などに包まれてモコモコと歩いている。特急電車乗車を目指す人は、小走り、駆け足、全力ダッシュで駅を目指していた。天気予報で晴天と言われていたが、東の空には太陽光を反射させた冷たい雲が浮かんでいた。乾燥した空気がおでこに当たり、軽い頭痛みたいな感覚が走る。
一気に押し寄せた冬の空気感。この冷たくて忙しない空間がお気に入りだったりする。日影から日なたに出ると僅かに体感温度が上がって、同時に自分の周りを取り巻く空気も日を浴びてキラキラと光沢を纏っていくように見える。
通勤ラッシュ時間帯の混雑具合に懐かしさを感じる。駅のホームは年中変わらず響く音に溢れていて、特に今の季節を象徴する音は聞こえなかったが、エンジン音を吐き出しながらホームに滑り込んできた列車の表面やガラス窓にうっすらと結露ができていた。扉一枚でできた境界線を多くの人が行ったり来たりしていて、取り残されないようにその波に乗った。乗り換えで下車していった人が多かったからか、時間帯の割に車内の空間にゆとりがあった。停車する駅ごとにどんどんパーソナルスペースは狭くなっていったが。
京阪、JR、阪神電車と乗り継いで神戸まで向かった。太陽が高くなるに連れ、寒くて縮こまる気候の中にも活気に満ちた空気の動きがでてきて、寝不足でうとうとしていた脳内も徐々に覚醒していった。早朝は雲が目立っていた空も、目的地に到着する頃には冬の空気フィルターでより一層彩度の高い真っ青な色に染まっていた。排気ガスが混じっているはずの空気も、澄んだように見えるから不思議だ。
神戸に来たら必ず立ち寄るパン屋さんは、残念ながら本日定休日。その代わり、新たなもう一つのパン屋さんを開拓し、ベーグルとお惣菜ぱんをたっぷりと買い込んだ。
高架下から吹きさらしの道路へ出ると、穏やかな、でも刺すように冷たい風が出迎えてきた。マフラーをきつく結び、隙間を埋めて防寒対策。
——早く炬燵に潜りたい。
着いたばかりなのに、既に家の炬燵が恋しくなった。

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