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執筆者の写真ユウキ サクタ

『信頼関係』

時折、道端で野菜や果物の無人販売店を見かける。京都市芸のキャンパス近くでは採れたての筍や桃、名古屋芸大西キャンパスへ向かう途中ではほうれん草やゴーヤ、そして先日は淀の個人宅の庭で玉葱が売られていた。


『泥付玉ねぎ 1盛 ¥100』

うわ〜立派な玉ねぎや!——思わずマスクの中で声になっていた。


目の前の道路は、乗用車だけでなく大型トラックもよく走っているし、複数の市バスの路線にもなっている。近くには中学校、高校もあり、学生達の主要な通学路のようだ。それだけたくさんの人が行き違う道でも、こうして無人販売を営んでいる農家がある。

……盗まれたりしないのだろうか?

山盛りの玉葱を見てふと抱いてしまった感想。こんな下世話な事を、一瞬でも考えてしまう自分の思考回路が少し恥ずかしくなった。

無人販売店は道ゆく人々に絶大な信頼を寄せている。丹精込めて育てた農作物を新鮮なうちに多くの食卓に届けたい、旬の採れたて食材を味わってほしい、そんな真っ直ぐな気持ちで続けている。‘無銭で持ち去っていく者はいない’という大前提があるのかも。

ここまで売り手に信頼されていれば、買い手の側も誠心誠意応えたいと思うものである。


大きな門構えをくぐり、初めての御宅へお邪魔する。間近でみる玉葱はさらに大きい。もちろんサイズにばらつきはあるものの、一つ一つずしりと引き締まった重さを感じ、食べ応えがありそうだ。

手作りの支払い箱に100円玉を投入する。チャリンポロンと幾つかの硬貨がぶつかり合う音が聞こえた。袋に移し替えて玉ねぎ1盛をお持ち帰り。

「ありがたくいただきます。」

制作の息抜きで見つけた新たな‘淀魅力’の一つだ。


採れたて玉ねぎで作ったビーフシチューは、いつもより甘味が増しているようだった。




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