岡山県倉敷市は、一人旅で何度も訪れている観光地。
最初のきっかけは倉敷美観地区内にある大原美術館で、毎年実施しているARKO(Artist in Residence Kurashiki, Oharaの略称)に招聘された作家さんの展覧会を見に行った事だった。倉敷川沿いの小道から眺めた時とは対照的に、館内は横に広々としていて、所蔵作品一点一点をじっくり鑑賞できるような動線になっていた。モネやゴーギャン、ルノワールなど美術館設立当時、既に美術史を代表する作家の作品を所蔵している。また日本の洋画家、児島虎次郎の作品を最も多く鑑賞できる美術館だと思う。(設立者の大原孫三郎は彼のコレクター且つ親しい友人だったそう。)
さらに時代をうんと遡って、マニエリスム先駆者のエル・グレコの『受胎告知』があった事に不意を突かれた記憶がある。一番目的の展示フロアに着くまでに見応え満載の作品が目白押しで、本館だけで2時間以上滞在していた。(本館の他に分館、工芸・東洋館、有隣荘がある。全て鑑賞したら4時間経過したこともあり。)以来、倉敷を訪れる時は毎回欠かさず大原美術館へ足を運んでいる。隣接するcafe EL GRECOもお勧め。珈琲の香りが道端にも漂っています。
もう一つ、私が倉敷に惹かれるものがある。先程の大原美術館を出てすぐ目の前に、美観地区をきっちり整頓するように倉敷川が流れていて、この川を基準としてお店や文化財の建築が仲良く並んでいる。観光川舟が浮かび、竹笠を被った船頭さんがゆったりと漕いでいる光景は、観光客の喧騒と対照的で異なる時間の流れが視覚化されたような雰囲気だ。そんな風景に、我関せずと自由気ままにスーイスーイと暮らしている動物がいる。
倉敷川を生活拠点にしているのだろうか?白鳥が二羽、のんびりゆったりと泳いでいた。観光客からの視線や歓声にも応えることなく、ただ水面に佇んでいる。時々毛づくろいをしたり、二羽で仲良く並んだかと思えば互いに逆方向へ泳いでいったり……。せかせかと時間に追われる自分の暮らしと比べて、少し羨ましく思った。ちなみにこの白鳥たち、ユメとソラという名前を持っている夫婦で、2017年にはヒナも誕生している。(倉敷観光webサイトより)
初めて出会った時、既にヒナ達が巣立ちした後だったようで家族勢揃いの光景は見られなかった。倉敷へ到着するたび真っ先にユメとソラを探していた。最後に見かけたのは、4度目の倉敷一人旅を満喫した2019年の秋。その時の景色を囲む世界と、今の世界は目まぐるしく変わった。変わってしまった。
それでも、今も気ままに泳いでてほしいな。
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