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執筆者の写真ユウキ サクタ

『一期一会も始まらない』

アトリエの徒歩圏内には多数の高層マンション、アパート、一戸建て住宅が所狭しとニョキニョキ並んでいる。夕方の時刻、お馴染みの桂川土手を散歩していると部屋の明かりがポッポッと灯っていき、彩度を落としていく建物と対照的に存在感を発揮する窓を眺めるのがお気に入り。

日が沈む前から明かりが灯る窓、決まった時刻に必ず点灯する窓、薄暗くなった頃にようやく明るくなる窓、逆に辺りが宵闇に包まれても点灯しない部屋の窓もある。


此処を制作の拠点にして1年以上経過するが、窓の明かりの持ち主さん達には一度も会ったことない。ひょっとしたら道端やスーパーなどですれ違っているかもしれないが、知る方法はない。

‘近くて遠い’という表現は、身近な場所でこそより強く感じるものだな。

同じ地域に住みながらおそらく一生出会う事のない人は確かにいて、かつて自分が暮らしてきた場所でも、出会った人より出会わなかった人の方が圧倒的に多いという事実。

旅先で‘旅人同士’として遠い国からの人と同じ屋根の下で宿泊した思い出もあれば、徒歩圏内でも思い出を共有しない人もいる。SNSで他者といくらでも繋がる方法はあるけど人間の身体は一つだけだから、一生のうちに会える人数にはどうしても限界ができてしまう。


徐々に増えてくる窓明かりを少しだけセンチメンタルな視点で捉えてみた。いつもの桂川の土手散歩でも、気まぐれな時間帯で歩いているため顔馴染みの人も今のところ見つからない。散歩やジョギング、サイクリングする人はいるものの再会したことはない。(していても分からないと思う。)


だからこそ偶然を積み重ねて出会い、今もつながっている縁を大切にしたいな。


いつもの散歩コース、一足先に土手を駆け上がっている人影を見つけた。きっとこの日限りの人々。お互い明日も良い日になりますように。


ちなみにハイデンバン玄人の作家さんいわく、淀周辺でスタジオハイデンバンはそこそこ知られているらしい。どんな視線で見守られているのか気になるところ……。




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