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執筆者の写真ユウキ サクタ

『パイ生地求めて三千里』

……とは少々大袈裟であるが、方方探し回って、ようやく冷凍パイシートを小学校アトリエ近くの百貨店売り場にて発見した。

ここ最近、無性にパイ生地をたらふく食べたくなる心理現象に見舞われ、パイの餓鬼道に迷いこんだか?!と不安定な気持ちだった。

シェアハウスの徒歩圏内にはコンビニが4軒ほどあり、はしごをすれば必ず、パイのお菓子は手に入る。そうすればもっと早くに、この飢餓地獄(パイ限定)から抜け出せたかもしれない。

ただいまとても穏やかな心境でこの文章を綴っているのだが、果たしてコンビニやスーパーに陳列されているお菓子で満足できただろうか?

——否、きっとすぐに飢えは再発しただろう。

あれほどまでパイ生地に拘っていたのは、ただ食べたかっただけではなかったから。(9割5分は食欲だけども。)


先日シェアハウス仲間の作家さんとのコーヒータイムで、食の話題がでた。ちなみに山怪シリーズを読破した人である。その会話での印象的な言葉。

「自分で作ったものってどれも美味しく感じるんだよね。」

ストン、と腑に落ちる感覚がした。出来栄えや味は一旦置いて、自分で手を動かして思考錯誤したものは愛着がわく。

今まで焼き上がった状態のパイ生地しか見ていなかった。生の生地ってこんな感触と色合いなのか。アップルパイはこうしたプロセスで作られてるのね!触覚と視覚からの新鮮な情報により、アップルパイの新たな一面を知った瞬間だった。


幼少期の記憶の断片がふと蘇る。

『ハンバーグってどこからきたんだろう?』

『ブロッコリーってどこで見つけてくるんだろう?』

『ごはん粒ってどこにあるのだろう?』

『ケーキは何からできるのだろう?』

料理をする、田畑を耕す、お肉や魚を捌く、これらの詳細を知らなかったころ、当たり前にテーブルに並べられる献立が、どこからやってくるのか不思議だった。スーパーの売り場に並べられている野菜やお肉の切り身、クッキーやチョコレート類もどうやってこのような形で誕生したのか、少ない知識を総動員して考えた。

『どこかの山奥にチョコビスケットの成る木があって、お店の人が毎日そこまで取りに行ってる!』という類いの答えに最終的に辿り着いていた。

成長し知識を蓄えるたびに、正確な答えや仕組みを理解していき、突拍子のない発想は思いつかなくなっている。少ししんみりする点であるが、抽斗が増えていくことは今後の自分の糧となる。


カリカリに香ばしく焼き上がったアップルパイ。初めて作った割には上出来な味だった。

今回は冷凍だったけど……パイ生地って小麦粉から作れるのかな?

新たな興味が芽吹き出す。


再びパイの餓鬼道まっしぐら、の予感。





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