『チ。−地球の運動について−』 レビュー
- ユウキ サクタ

- 8月17日
- 読了時間: 2分
最近「チ。-地球の運動について-」を読破した。中世の宗教が絶対的だった世界で、地動説を巡り命懸けの選択をする人々。当時異端とされた「地動説」を主軸に、天文学、数学、技術、宗教など何かに魅了され、真剣に、時には盲信的に取り組んで生きる姿が鮮明に描かれてて、月並みの感想だが面白くて一気に読んだ。
こちらの漫画、登場人物の関係性が濃密で一人一人の発する言葉に重みがある。中世から近世への過渡期とも言える15世紀、たとえ激しく敵対したとしても同じこの時代を作った仲間だと言い切る台詞に、今にも通じる精神的な納得感を抱いた。共感と示すには親近感があり過ぎて、理解というと表現が固いような気がする。どうしたもんかと考えて、最終的に「納得」と語源化することで自分の中でストンと腑に落ちた。他にも「迷いの中に倫理がある」、「文字があれば時間と場所を超越できる」など「ストンと納得」する言葉がいろいろ出てきて、ジャンルは「漫画」であっても言葉の物量が多く、小説やラジオを聴いているような感覚になった。絵柄との相性も良くて、輪郭線の太い箇所があったり人体のデフォルメが大きく逸脱していたりアバンギャルドな印象。でも正確なデッサンにのっとったアカデミックな描きよりも、彼らの語る言葉に相応しい迫真に迫る表現だった。木版画や木彫作品を見た時のような、ずしっとした素朴な感触(もちろん紙に印刷された単行本なので実際に凹凸を感じたわけではないのだが、個人的に触覚を刺激される描き表現だった)。
『地動説』は今や世界共通の天文学概念で、太陽を中心として地球も他の惑星と同じく太陽の周りを公転しているという定説は疑うことなく学んできた。だがこの物語のように、少しでもその説を語り、研究しようものなら、容赦なく死の粛清があったことは歴史にも足跡として刻まれている。21世紀の科学世界で生きる感覚からすると、自分の信じてきた真実が180度ひっくり返される新説が語られたからといって、人の生死を秤にかけることは理解し難い。あくまで自分が15世紀の時代を作った当事者ではないから?だろうか。






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