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執筆者の写真ユウキ サクタ

『コーヒーの日』

10月1日はコーヒーの日だった。

京田辺市にある行きつけの珈琲豆屋さんでも、この日に因んでお買い得セールを始めていた。

「おおきに!こんにちは。」

扉をくぐると、真っ先に珈琲豆のほろ苦く温かい香りが鼻腔をくすぐる。香りの発生源は店内に所狭しと並べられている生豆ではなく、出入り口近くにどっしりと佇む焙煎機。

「苦味の効いた豆だと今月はこれなんかお勧めですよ。」

顔馴染みとなった店員さんは、私好みの珈琲豆の系統を既に把握している。

店内を歩き回って焙煎で日焼けする前の豆をじっくり観察してみる。珈琲豆と言っても、その形態や味、収穫される木々から生産地まで千差万別。

京都に引っ越してがらりと変わったライフスタイルの一つは、毎朝手動で珈琲豆をゴリゴリ挽いてハンドドリップで煎れた温かいブラックをいただくようになったこと。

一杯の珈琲を飲むために費やすこのひとときは、分刻みでスケジュールを組んでいる人にははっきり言って無駄な時間に映ってしまうだろう。コンビニや大手カフェへ行けば1分と経たずに美味しい珈琲が提供される。さらにレパートリーも豊富で気分によって注文する品を選ぶこともできる。良いことづくしだ。

では何故?わざわざ手間をかけて一杯を煎れるの?

偉そうに珈琲の魅力を語れるほど極めていない。なんとなく感じるのは、ミルを廻し、フィルターをセットしたドリッパーと珈琲サーバーを用意して、ドリップポットにお湯を沸かし、挽いた豆にそ〜っと注ぐ一連の動作をしている時、一瞬一瞬どこを切り取っても周りに必ず芳しい香りが漂っている。注いだお湯がフィルター内の細かな豆をぽこぽこと盛り上げている映像を眺める時、その香りは最高潮に達する。一つのものを作り上げる楽しみが、奥ゆかしくも強く心に響くのだ。

「美味しいものがすぐ手に入るのも良いけど、こうした過程を生活のルーティーンに入れるのも1日のスタートダッシュを切れるきっかけになると思うんだよね。」

朝晩の冷え込みが厳しくなり、珈琲の消費が増えそうだ。次はどの豆で煎れてみようかな?



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