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執筆者の写真ユウキ サクタ

『クロスオーバー』

クロスオーバー……異なる要素がお互いの境界線を越えて交じり合う事。ストーリー、分野などが混合する事。主に音楽において、ジャズやロックなどジャンルの垣根を越えて音楽性を融合させるスタイルを指す用語として使われている。

とはいうもののクロスオーバーの定義は音楽に限られたものでもなく、アニメやドラマ、映画作品でも扱われる技法であり、異なる作品の主人公が同じ世界線で展開していく物語や、別作品で脇役だったキャラクターを主人公にした作品、ヴィジュアルが一緒で作品ごとに少し役回りを変えたようなキャラクターの登場など、その表現方法は多岐にわたる。名探偵コナンに登場する怪盗キッドや、かいけつゾロリシリーズなどが良い例ですね。


先日自宅にある本を整理していて、「そらいろのたね」の絵本を見つけた。男の子がきつねの子からもらったたねから、そらいろの家が芽吹きどんどん生長していくお話。家が大きくなるたびに子どもや動物達がやってきて中に入っていくのだが、その動物達に紛れて、青い服と赤い服を着てバスケットを抱えた二匹ののねずみの姿が描かれていた。

「ぐりとぐらがクロスオーバーしとる!」

こちらの絵本、作者が同じで出版社も同じ。またどちらも《こどものとも》傑作集として出されていて、クロスオーバーするには充分な土台があった。ぐりとぐらのシリーズでは主人公の二人(あえてふたりと記します)は、木や他の動物達とのバランスを見るとだいたい人くらいのサイズ感で描かれていたが、「そらいろのたね」の中では小さなのねずみサイズで登場していた。人が主人公のお話で台詞もないささやかながらの描写だったが、ぐりとぐらが何処かに存在するかも、というリアリティを感じられた。よく見るとりすやぞう、ライオンなどもクロスオーバーしている。(同じ作者だから似た描きになるという意見もあだろうが、此処は敢えてロマンを感じたいところ。)この技法は加減が難しそうだが、融合が上手く一致すると作品への解像度が上がる気がする。


幼少期から手に取っていた絵本だが、この発見はつい最近の出来事。シリーズ化されることの多い絵本には、隠れたクロスオーバーが沢山あるかもしれない。




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