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執筆者の写真ユウキ サクタ

『イメージの源泉』

お菓子作りにはげむ女性というと、どんな姿を思い浮かべるだろう。


時々思いつくままにケーキやクッキー、和菓子などを作ったりしているのだが、自分がお洒落で清潔なシステムキッチンの前に佇み、テキパキと華麗にクッキングしているイメージはどうも思いつかない。

お菓子作りにしろ、晩御飯のおかず作りにしろ、その作業の間に頭の片隅で浮かんでいるのは、真っ黒で巨大な大鍋に木製の凸凹おたまでぐつぐつと煮込み料理を仕込んでいる姿だ。

典型的な魔女や山姥の佇まい。

小さな子なら腰を抜かし、恐怖に泣き叫ぶ構図だろう。ホラー映画やドラマが苦手な私も、幼少期は白雪姫の魔女が毒林檎を作る様子や三枚のお札に出てくる山姥が包丁を研ぐ映像が出てきたら、目をきつく閉じて耳も塞いでやり過ごしていたほどだ。


それなのに今、自分が‘料理’という暮らしの上で欠かせない基本的な作業をするとき、しっくりいくイメージは魔女や山姥……かつて恐怖の対象だったもの。さらにノスタルジックな音色や色彩まで纏い、より身近に優しく寄り添ってくる。(よくある怖い姿で)


何故だ??


季節イベントに乗せられてついつい大量に買い込んだチョコレートをふんだんに活用し、作業を進めながら改めて考えてみる。

以下3点の視点が思いついた。

①実家の環境がお洒落クッキングと程遠い家庭料理だった。

②一人暮らしを始めた際、一番よく作っていた料理が肉・魚・野菜がごちゃ混ぜの煮込み料理ばかりだった。

③記憶にある料理人の姿が母・父・祖母に続いて絵本の魔女・山姥、ごくたまにぐりとぐらなどの動物。


③の答えを出したとき、確かに白雪姫もシンデレラも鉢かづき姫も、‘掃除’や‘洗濯’いわゆる汚れ物を綺麗にする作業は強調されても‘料理’をしている姿はさらりと流されていたかもしれない、と納得した。少なくとも当時の私には、‘料理’は彼女たちの姿で刷りこまれなかった。


料理イメージは魔女と山姥。なんとも奇妙で可笑しなルーツをまた一つ発見した。

ただいま湯煎でチョコレートを溶かしながら、せめて「スプーンおばさん」のイメージを付け加えたいなあ……と僅かな乙女心も抱いている。




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