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執筆者の写真ユウキ サクタ

『アトリエ玉手箱』

久しぶりに境谷小学校アートスペースへ行った。

およそ半年ぶりに入った制作室は蝉の鳴き声が響く夏の日に出した絵具そのままに、時間が日焼けしたような空間になっていた。

「うわっ、こんな作品描いてたっけなあ?」

すっかり置き去りにしていた作品に少しだけ砂埃——小学校特有の細かな白砂のようなもの——が纏わりついている。パレット用の大きなアクリル板には、一応拭き取っていたものの油絵具が一面に薄くぴたりとくっついていて、テレピンやスタンドオイル独特の匂いを放っていた。タイムカプセルか玉手箱を開けたような感覚だ。


アトリエと言っても、此処はハイデンバンと違っていろいろな制約がある。利用時間は8時から17時まで、授業中は大きな音が出る作業禁止、壁の釘打ち禁止など。限られた設備でどんな作業ができるだろう?と試行錯誤した日々を思い出す。

本来の小学校滞在制作はアトリエに篭って作品と向き合うばかりの作家と、アートに触れる機会が少ない感性が柔らかな小学生、この普段関わらない立場の者同士の出会いがあった。でも今のご時世、生徒たちとゆっくりお話ししたことは一度もない。アトリエ拠点としてかれこれ2年経過するのだが、未だ使い勝手が不慣れな部分がある。

早く当たり前だった交流時間が動き出すといいんだけどな。

「朝8時から縄跳びやってたんですよ!私絶対無理です……。」

小学生の凄いところは、こうした真っ直ぐなパワフルさだと改めて感じる。毎年のように「今どきの子どもは……。」と否定的な文言を耳にするが、案外子ども自身は変わっていないのかもしれない。

何を隠そう、自分も保育園や小学校に登校した瞬間、校庭に飛び出してフラフープや竹馬、一輪車に夢中になっていた。(もちろん読書やお絵描きに勤しんでいるクラスメイトもいた。)

いつからかな?私にとって朝8時は布団の中か、のんびり朝食をとっているか、珈琲を淹れながら戸棚のお菓子をつまみ食いしている時間帯になっている。身体はまだまだお休みモードだ。

世間に目を凝らすとまた不穏な流れが湧いてきている。もうそろそろ抜け出して次のスタートラインに行きたいのが本音。

ハイデンバンと小学校、2つのタイプのアトリエ。もっと有効活用したいな、とF130号キャンバスを張りながらぼんやり思案していた。




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