「ぽっこん」という響きで懐かしさを覚える人はどれくらいいますか?
小学生の頃に流行っていた遊びについていろいろ話す中、相方が「ぽっこん」について熱く語っていた。
20年以上前、学校給食で提供されていた牛乳瓶の蓋がまだ紙製だった頃、この蓋を使ったちょっと変わった遊び風景があった。
紙製とはいえ、液体を密閉するための役割を果たすだけあってそこそこ頑丈な作りだったらしく、これらを集めて友達とメンコ遊びみたいなことをしていた。誰がいつ始めたのか、ルールはどのように決められたのかは分からないままで、ただ「ぽっこん」という名前で上級生から下級生へ連綿と受け継がれていったもの。遊び方は単純で一対一でお互いの蓋を床に置き、その蓋めがけて手を思い切り叩く。風圧で蓋がひっくり返ったら勝ち、ひっくり返らなかったら相手のターンになるという。細かなルールは対戦する時によって違っていたが、基本的な部分は誰もが熟知していたらしい。ちなみにこの遊びにはまっていたのは、ほぼ男の子だったそう。
「蓋にもいろいろ種類あってさ、青色はよくあるやつでその次が赤、緑がレアで、ごく稀にすごい硬めのもあってそれが最強だったんだよな。」
レアな蓋を手に入れるためにクラスの女子に交渉して貰ったりもしていたらしい。そこまでして欲しいものだったのか、と話を聞きながら男の子の収集癖の特徴を垣間見た気がした。多様性が声高に叫ばれていても、やはり男女差の特徴は切っても切れないものだろう。
「ぽっこん」という名つけ由来は、蓋を開ける時にぽっこんと音が鳴ること。ひっくり返す方法の叩き方も様々な技があるようで、がむしゃらに手を叩く、掌に丸い空を開けて叩く、手首のスナップを効かせる、なんてものが開発されていた。掌がヒリヒリしそう……。
ただし、この「ぽっこん」遊び、今の小学校に残っている可能性は極めて低い。私が小学校へ入学するタイミングで牛乳瓶の蓋がプラスチック製になり、ちゃんと蓋を閉じて回収されるようになってしまったし(そのためかクラスの男子の間でもこの遊びは普及していなかった)、相方の小学校でも負けたら蓋を取られるといった賭け事めいた側面を帯びる様になり、トラブルが絶えなくなって「ぽっこん禁止令」が出されてしまった。あっけなくこの遊びは終焉を迎えたとのこと。
なんの変哲もない紙の蓋だが、お金や宝石並みの価値を子ども達によって植え付けられていた。お宝のように感じる想像力と、それに見合ったルールを作り出す創造力。大人とは違うエネルギーの使い方をしている。ちょっと羨ましい限り。
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