現代社会では、どうしても野菜の摂取量が少ない傾向にあるように思う。スーパーの野菜コーナーへ目を向けると多種多様な野菜が規則正しく陳列されているが、果たして季節ごとの旬の野菜などをどれだけ正確に知っているだろうか、と自問自答したくなる。物価の上昇対策や作品制作のための時間確保のため、我が家の野菜摂取の源はパック包装で洗わずに直ぐ使える千切りキャベツやミックス野菜。でも、こればかりではいくら野菜を摂取しているとはいえ、栄養に偏りが生じているのは確実である。
京都独自の単語で「おばんざい」がある。お番菜、お晩菜、お万菜とも書く。両手を思い切りのばして伸びをする赤子の像が浮かぶ響き。京都の一般家庭で作られるお惣菜を指す言葉で、料理人が提供する伝統的な京料理とは別物の概念として定着している。ただ、最近の健康ブームの影響で飲食店でも「おばんざい」を看板に掲げている場合も増えているようで、菊菜の白和え、おからの炊いたん、切り干し大根の煮付け、小松菜のごま浸しなど、家庭で馴染みのあるメニューが注文できる。(これらのメニューを頻繁に作る時間も予算も足りなかったりする……。)歴史を振り返ると魚が使われることはほぼ無かった。地理的に京都が内陸地にあることが理由の一つだったらしい。
先日初めて開拓した採れたて京野菜とおばんざいのビュッフェレストランでは、畑バーのコーナーにてその日に採れたばかりの新鮮な野菜がボールに入って並んでいた。全く調理されていない原色そのままの色彩を纏ったトマト、にんじん、きゅうり、わさび菜、セロリ等々。オリジナルの手作りドレッシングにも、しば漬けやかぶらを使ったものがあり隅から隅まで野菜尽くし。今が旬のものを揃えているだけあって、野菜そのものに甘味や瑞々しさを感じられた。一方のおばんざいコーナー、定番の炊いたん、お浸しの和食から、ポテトサラダ、ごぼうとにんじんのマヨネーズ和え、マカロニサラダなど現代的な味付けのものまで幅広い料理が大きな小鉢みたいなお皿に盛り付けられている。空っぽになった小鉢は新たに出来上がった他のおばんざい料理と交換され、どんどんメニューが更新されていった。
ほぼ野菜類だけで満腹になったのは初めてかもしれない。
普段の暮らしにも、このくらい充分な野菜を摂れたらもっと健康体になれるだろうか……。
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