『まんが』は言わずと知れた日本の文化の一つとして、世界共通の言葉となっている。物心ついた頃から既に漫画は手の届くところにあって、いろいろなジャンルの漫画を読み漁っていたなあ……としみじみ思い返した。SF、社会ドラマ、ファンタジー、ミステリー、学園、ホラー、歴史など。物語だけに限らず、世界の偉人を扱った学習漫画や、古典文学をモチーフに漫画化された作品も数多く存在する。細かく分けていくときりがない。
さて、それなりの数の漫画を読んできましたが、ここでは田辺イエロウさんの『BIRDMEN』という漫画について語ります。
思春期真っ只中、日常に鬱憤を抱えている主人公が鳥男の同級生と出会い、自らも鳥男となって自分の世界を広げていくお話。’SF青春ジュブナイル’と銘打っているだけあって、最初は学校や家庭の風景が垣間見える。お話が進むにつれて舞台は学校から外へ、やがて世界中を転々としていく。単行本は全16巻で完結するが、科学や倫理の概念が盛り込まれていたり、絵画を彷彿とさせる構図やコマ割りが幻想的な場面を演出している。ともすれば、現実にもいるような等身大の10代のキャラクター達が多く、会話や表情に幼い自分を重ねてみたりして懐かしい気持ちにもなったりする。田辺さんの漫画作品を読み始めたのもちょうど10代前半の頃だった。
『BIRDMEN』でお気に入りのキャラクターは、初登場時に名前もついていなかったクラスメイトの女の子。物語の中心にいるわけでも、お話の要になる瞬間もないのだが、素朴な雰囲気の造形と主人公との数少ない関わりが、なんとなく平凡な日常の温かいひとときを表現しているように読み取れた。(深読みしすぎかもしれないが、SNSでは意外にも隠れた人気があったようだ。同じ感覚を抱いた読者は多かったのかもしれない。途中でちゃんと名前が付けられたのも感慨深い。)
主役や重要な役どころのキャラクターが魅力的なのはもちろんだが、名前もない小さな役のキャラクターまで生き生きと描かれているか?漫画に限らず、エンターテイメントの魅力を引き出す大事な要素なのかもしれない。他の漫画でも人気キャラ投票などが盛り上がるが、順位が常に安定していることは少ないなあと感じる。時には作者も覚えていなかったキャラクターがランクインする事もあるようで……。
読者が一つの世界を隅々まで見渡せる’漫画文化’は、これからも続いていきそうだ。
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