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執筆者の写真ユウキ サクタ

『'らしさ'とアート』

男らしさ、女らしさ、西洋らしさ、アジアらしさ、黒人らしさ、白人らしさ等々、「らしさ」で物事を見たり決めつけたりすることは好きじゃない。センシティブな話題は毎年事欠かないが、今年も社会ニュース的にいろいろあったなあ、とみかんを頬張りながらしみじみ思う。

性別による役割分担や国籍・人種の図像は、長ーい歴史の中で形作られたいわば固定的イメージ。そしてそこから美術作品が生まれたり、オペラやクラシック、バレエ等の荘厳な音楽が誕生した経緯がある。

それらを’今’の価値観で見て、「差別的!排除すべき!」と声を挙げる人がいるが、芸術の世界に身を置く作家としてこの意見は好きじゃない。

芸術家がどんな意図で作ったのか、当時の世界の認識や社会情勢がどんなものだったのか(歴史的文献などではなくて、人が肌感覚で受け取る空気感)を、完璧に分かる人は何処にもいない。歴史が古くなればなるほど時代錯誤な印象を、美術・音楽に限らず全ての芸術作品は纏うことになる。

100年後、200年後の世界は今の価値観から更に進んで、確実に変化しているだろう。その時、自分の作ったものが「排除すべき悪しきもの」認定されたら、草葉の陰から泣くどころじゃない。(化けて出るかも……あくまで残っていたらの仮定ですが。)


個人の呟きは取り敢えず置いておき、今の価値観のみで過去の全ての作品を否定し抹消することは、今の時代の形跡を未来で抹殺されても文句が言えないのではないか?

美術史をざっくり紐解くと、前時代の技法や考えの否定から新たな’美術の流れ’が生まれた事が分かる。でもかつての名作品を排除し無かったことにはしなかった。その時代があったからこその’今’だと、おそらく理屈抜きに分かっていたからだろう。

悪意を持って誰かを傷つけるものは作りたくない。もちろん「らしさ」に囚われたり、外からの否定の言葉に萎縮したくもない。アートは今の時代とても自由。明確な答えが無い難しさがあるけど、それが弱点でもあり大きな魅力だと思う。

甘く熟したみかんは年の瀬を感じる風物詩の味。ぼんやりと来年の抱負を立てておく。


『もっと絵に柔軟な発想を取り込もう。』




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