先週末、注文したGARNET CROW20周年記念物販が届いた。10年以上聴いているお気に入りバンドのグッズに惜しみなく課金できる喜びを噛み締め、段ボールの宝箱を解いていく。
Tシャツにパーカーにマグカップ。どれも毎日使うもので、手に取るたびに音楽の世界観や色彩を感じられそうだ。
この中の一枚、薄桃色の布地にイラストが大きくプリントされたTシャツに袖を通した。
9枚めのアルバム収録曲「JUDY」をイメージしたTシャツ。MVも漫画家さんとコラボレーションしていて本を捲っているような演出が印象的だ。
ピアノのイントロから始まり、ギターとドラムのサウンドが追いかけてきて、歌詞がぽんっと芽を出す。知る人ぞ知る名曲のひとつ。
貴重な日曜休みの夜、JUDY3点セットで映画鑑賞をした。
作品は『NEVER LET ME GO』(わたしを離さないで)。
イギリスの小説家カズオ・イシグロの代表作。
「JUDY」はファンの間で、この小説がモチーフなのでは?と語られている曲なのだ。
他の曲でもノヴァーリスやサガン、百年の孤独、Elysium、Jesusなどなど、文学や神話からの謎めいた人名や単語が歌詞に出てきたりする。
(美術史からはRembrandtやSérusier、Goghの向日葵が登場した。)
「JUDY」がきっかけで、より様々な本を手にとるようになった。書店内で文庫本の小説はもちろん、エッセイや紀行文、評論といった今まで読んだこともない分野の本棚へ立ち寄る機会も増えた。
その中でも『Never Let Me Go』は泣きながら読了した物語。活字だけで涙が溢れた体験は初めてだった。
映像化された媒体は言わずもがな、風景と登場人物の心理がリンクしているようにも感じられた。記憶の中の暖かい日差しを浴びているヘールシャム、冒頭と最後の時間を支配する冷たく無機質な手術台。はらはらと涙を零しながら夕暮れを見つめるシーンは、小説とも違った魅力と切なさを醸し出していた。
ひとつの曲から新しい興味を引き出せた、特別な思い出を纏ったお勧めの物語だ。
鑑賞後、再び雫の形跡が頬をなぞっていた。
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