『ねずみくんのチョッキ』。全国学校図書館協議会選定図書と記されているだけあって、きっと誰もが知っているお話だろう。1974年に第一刷が刊行され、2020年時点で五十回以上も重版となっている。絵柄と物語の流れは手元に本が無くても細部まで鮮明に思い出せるほどだ。
そんな『ねずみくんのチョッキ』実は続編があるのをご存知ですか?(私は知らなかった。)
久々に近所の図書館内を散策した時、普段は素通りしていた絵本コーナーになんとなく足を踏み入れてみた。作者の名前順に並んでいる棚と本のタイトル順に並んでいる棚とが乱立していて、隙間なく押し込められた本の壁からお気に入りの一冊を見つけるのは大人でも難しい。でも目的を定めずに背表紙のタイトルをただ眺めながら歩く時間も、外で日光を浴びながら散歩するひとときと似通った感覚を抱ける。
本の雑木林で見つけたのが、少し日に焼けて背表紙タイトルの色彩が抜けていた『また また!ねずみくんのチョッキ』である。恥ずかしながらこの瞬間まであの絵本に続編がある事を知らなかった。くたくたに伸びてしまった赤いチョッキを、友達のぞうさんがブランコにして遊んでくれた場面で物語は大団円を迎えていた。そこからまたどんなお話が展開しているのだろう。思いがけない物語の続きを垣間見るような高揚感に浸り、絵本コーナーで小さな子の中に紛れ込んだまま読み進めていった。
三十ページ程の出来事はあっという間に読了。その間でも「お!」「え。」「あはは!」と自身の感情が見て取れるほどに変動していた。ゆとりのある絵の構図と必要最小限の言葉だけが記されていて、読者側がページとページの間に隠れたお話を無意識に想像できる。想像力を掻き立てるこの物語の表現は、絵本としての媒体の魅力を最大限に引き出していると思う。絵本を手に取るのはやはり幼い子どもか、その子の両親に限られることが多いが、難攻不落な社会の波に揉まれている大人達こそ絵本コーナーを彷徨ってみてはいかがだろうか?
今回目に留まった絵本、なんと『ねずみくん』シリーズとして四十五冊もあるうちの一冊で、1979年に刊行されたお話。最近でも2020年に『ねずみくんはめいたんてい』が出版されている。(子どもに大人気のおしりたんていに対抗意識を燃やして制作したのだとか。)
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