「続けることが大事だね。」
いろいろな場面で拠り所となっている一言。
はっきりと意味を刻みこんだのは、名古屋芸術大学の学生時代、ほんの短期間だけお世話になった先生の個展を見に行ったときの事だ。
直接授業やゼミで教えていただいたことは無かったが、アトリエで顔を合わせたときに作品批評をしていただいたり、お薦めの展覧会情報を尋ねたりといったコミュニケーションをとっていた。この先生と沢山の思い出を共有しているわけでは無いのだが、「続ける事が大事だね。」という意味の言葉と触れる度に、2018年の個展会場での会話を思い出す。展示会場は日本家屋。レトロな雰囲気が満載な橙色の電球を光源に、所狭しと平面作品やインスタレーション作品が展示されていた。
「見に来てくれてありがとう。がんばってね。続ける事が大事だね。」
4年間の月日による変遷で周囲の記憶は朧気なのだが、言葉だけ鮮明に覚えている。似たような言葉は学部で専攻・授業をずっと担当していた先生や、大学院の先生からも日常的に聞いていたと思う。当然、その方々についての記憶の方がより多く残されている。アートの世界に限らず、日常的にも多くの人から聞かされていた。
それでも「続ける事が大事」という言葉に当てはまった思い出は、この場面一択だ。明確な理由は分からないままだけど……。
ただいま開催中の個展では、作品への賛否両論が特にたくさん届いた。一つの作品に対して、
「此処の部分が良くない。」
「この構成が良いね。」
「此処の線が余計だなあ。」
「この描き独創的やね。」
個人的感想から技術的な視点まで。複数の作品に寄せられた正反対の意見は、まだ自分の中で昇華できるほど理解していない。ただ、これらの感想の後には必ず「続けることが大事」との意味が込められた言葉をもらった。
今年で油絵具を使い始めてちょうど12年。(干支がぐるりと一周しました。)
美術史の流れの中では、まだまだ序章の道半ば。半世紀以上絵筆を握り続ける作家が、この世界には大勢いるのだから。
展覧会のたびに次なる課題が見えてくる。自分の作品をじっくり客観的に捉えられる貴重な機会。次はどんな作品を作ろうかな?
ネタとアイデアを忘れずに記しておく。
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