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執筆者の写真ユウキ サクタ

『収穫』

物を一つ、作りあげるには膨大な知識と時間と労力が必要となる。その度に、大きな収穫が得られる。


「とんぼは全てのレイアウトが完成してから設定したほうがいいです。作り方はオブジェクトの‘トリムマーク作成’を選択したら簡単にできます。この時にきちんとアートボードの中心にレイアウトを揃えるのがコツです。でないとせっかくのデザインが切れてしまいますから。」


先日書き溜めたエッセイをようやく本に仕上げることができたのだが、実は前日にとんでもないポカをやらかしていた。

以下、その時のことを綴ります。

データを持って行き、印刷するサイズや用紙を選んで完成イメージを膨らませ、いざデータ送信して印刷&製本開始!……と意気込んだのも束の間、データが重すぎて送れず、保存形式の変換とページの手直しに長時間お店に居座り、挙句とんぼの位置がアートボードごとにずれていて製本作業に支障がでる状態だったため、印刷を断念する羽目になった。

漫画のガーン——……、という効果音がまさにぴったりな状態だった。


でも、ずっと悪いことが続くわけではない。

「0から作り直しか……。」と半ば放心状態になった私に、印刷店のスタッフさんが上記の知識を伝授してくれたのだ。


「ひょっとしてお店のWebにあるテンプレートのとんぼ使いました?」

「はい。こんな簡単にイラレでとんぼできるなんて知りませんでした。」

「ついでに各アートボードのレイアウトはグループ設定しておくといいですよ。どれか一つのオブジェクト選択したら他のもちゃんと移動したりサイズ変えられたりするので。」

嫌な顔一つせずに、自分の持っている知識やイラストレーターでのデザイン方法を惜しげもなく教えてくれる。

菩薩にも如来のようにも感じた。Adobe Illustratorの新たな知識を会得できたのは、何よりの‘収穫’だった。


「データ作り直して、明日出直してきます!」

帰り道、この日は曇ったり風が吹いたり横殴りの雨が降ったりと大忙しな空模様の一日だったが、雨上がりの雲の切れ間からハッと目が開くほどの橙色が街並みを照らしていた。

この景色も一日の‘収穫’だ。


「大丈夫。ちゃんと完成させる。」

直感は当たり、なんとか形にすることができました。


作ることは止められない。




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